『ちはやふる -結び-』
監督:小泉徳宏
概要
末次由紀のヒットコミックを原作にした青春ドラマの続編。全国大会での激闘から2年後を舞台にして、競技かるたに打ち込む高校生たちのさらなる戦いを活写する。監督の小泉徳宏、広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希ら前作のスタッフ、キャストが結集。新たなキャストとして、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」などの優希美青、『くちびるに歌を』などの佐野勇斗、『森山中教習所』などの賀来賢人らが参加する。(シネマトゥデイより)
感想
結びをなにから語ろうか。
明るく彩度を上げたルックや心地よいリズム感、そして、いつものメンバー。実写版『ちはやふる』が帰ってきた。2年という月日は長いようで短いようで。高校3年になった千早たち。劇中でも同じだけの月日が経過した。
物語自体は、原作と相当に異なっている。一エピソードに何話も費やせる原作と、全部で二時間しか使えない映画では、当然、時間の流れも異なる。そのため、実写版『ちはやふる』は原作の物語を単にダイジェスト化するのではなく、物語を一旦融かした上で再構成している。これは「上の句」の段階からそう。
今作においては設定にも変更が加えられた。原作では1コ下の菫たちが映画では2コ下になり、したがって田丸妹が登場しない。田丸妹のキャラは筑波くんに統合されている。富士崎高校も登場しない(似たような高校が一瞬だけ登場)。その代わりというか、富士崎の山城理音と、新の後輩山本理沙がセットになったようなオリジナルキャラクター我妻伊織(清原果耶)が登場。
こうした方向性が賛否を生むのは分かるし、すべての「実写化」がこの方向性を採るべきだとは思わない。ただ、こと『ちはやふる』に関しては、この試みは成功している。ちゃんと『ちはやふる』のエッセンスを保ちながら、映画としても成立させている。なにより、あれだけ長く複雑な話をシンプルに分かりやすくしているのは大きい。それで枝葉が削がれているのは確かだとしてもね(それが欲しければ原作を読めば良い訳だし、アニメもまた始まるし)。
キャラクターを大幅にカットした一方、菫のくだりは比較的丹念に描かれている。原作ではマンガ的なキャラクターだった(それはそれで良かった)けれど、実写版の菫はなんというか…中井りかみたいな女の子(48ファンにしか伝わらんな…(^_^;))。優希美青がこのキャラクターに血肉を与えている。「下の句」の影のヒロインが志暢=松岡茉優だったとしたら、『結び』の影のヒロインはこの中井りか…もとい菫と言って良いと思う。
清原果耶演じる伊織は(とくに前半)ほぼコメディリリーフなんだけれど、これはこれで良い。とかくシリアスになりがちな太一パートに対して、伊織が加わった新(アラタ)パートは良い意味での軽快さがある。「下の句」では、それまで圧倒的な力で物語を駆動していた千早が苦悩することにより、作品全体のペースが落ちていた。そこへいくと、この「結び」は、新パートの軽快さがちょうど良いバランスを作っている。
通り過ぎていく過去の風景。それぞれの場面に込められていた意味…。「結び」にふさわしい締め方…
なのだけれど…惜しむらくは、終盤の展開にやや力業感があった。まだ原作が終わっていない段階で、とりあえずのケリを付けなければならない。原作からエッセンスを取り出そうにも取り出せないわけで、そこはやっぱり弱かったように思う。焦点を、千早-新-太一の関係に合わせるのか、それとも瑞沢かるた部に合わせるのか…という難しさも感じた。ラストは少し寂しく感じたな…。実写版ってじつは瑞沢かるた部の話だったんじゃないか…と、ぼくは思ったんだよね。
なので、5点満点はあげられなくて4.5…ただ、同じ4.5でも「下の句」よりはこっちが上で…順番を付けるとしたら「上の句」>「結び」>「下の句」という感じかな。ただまあなあ…このシリーズはもう、ぼくにとっては特別。他に代えが効かない。名実ともに最強の青春映画シリーズだった。終わってしまうのヤだな…。
また会いたいよ。
☆☆☆☆★(4.5)