火花(3.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
火花 
 
監督:板尾創路
 
概要
 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の芥川賞受賞作を、菅田将暉、桐谷健太ら出演で映画化した青春ドラマ。漫才の世界に飛び込んだものの結果を出せずにいる男と先輩芸人を通して、厳しいお笑いの世界で切磋(せっさ)琢磨する若者たちの姿を描く。メガホンを取るのは俳優だけでなく、『月光ノ仮面』などで監督も務めてきた芸人の板尾創路。木村文乃、川谷修士、三浦誠己らが共演する。(シネマトゥデイより)
 
感想
 芸人による芸人の物語。漫画家が漫画家を描いた『バクマン。』などに近いものを感じるけれど、違うのは使っているメディア。漫画家が漫画家の話を「漫画」で描いている『バクマン。』に対して、これは芸人が芸人の話を「小説」にし、それをまた芸人が「映画」にしている。なんと捻れた構図だろう。
 
 原作は未読。でもやりたいこと、描きたいことは分かる。成功者と失敗者のコントラストを浮き彫りにするような単純な図式に落とし込んでいないところも、僕は気に入った。コンフリクトを拵え、キャラクターの違いを際立たせ、なにかインパクトのある事件を起こす…そんな使い古された脚本のセオリーが見られないところは、むしろ「素人」ならではの美点に思える。
 
 監督は正直、ヘタだと思う。板尾さんは才気を感じさせる人だけれど、やはり映像の人ではない。演出にメリハリが感じられない、エキストラの動かし方もワザとらしい。序盤のシーンは、あとから振り返ったときに、なにか特別な煌めきが感じられるように作られていないといけない筈なのに、そこも弱い。
 
 なにより、ひとつひとつのシーンで画がもってない。僕は、映像作家のもっとも重要な資質は、「画がもつかどうかを判断できること」だと思っている。この映画からはそれが感じられない。
 
 とは言え、いいところもあるにはある。とりわけ中盤以降には「ほう…」と思わせるシーンもある。ただ、それが断片にしかなってなくて、全体のなかで有機的に機能していない。
 
 芸人に引退はない。芸には…漫才にはいろんな形がある。そうしたテーマを考えたときに、これもまた又吉直樹と板尾創路によるひとつの漫才だ…と捉えることも、もしかしたら出来るのかも知れない。ただ、芸人が芸人の話を小説で描き、それをまた芸人が映画にする。その皮肉さは、この作品にある「芸に対する想い」を、すべて覆ってしまったようにも思える。少なくとも、その皮肉さを吹き飛ばすだけのパワーは感じられなかった。
 
 菅田くんは良い。
 
☆☆☆★(3.5)​