ダンケルク (2017)
DUNKIRK
監督:クリストファー・ノーラン
概要
第2次世界大戦で敢行された兵士救出作戦を題材にした作品。ドイツ軍によってフランス北端の町に追い詰められた連合軍兵士たちの運命と、救出に挑んだ者たちの活躍を描く。監督は『インセプション』などのクリストファー・ノーラン。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ、『プルートで朝食を』などのキリアン・マーフィ、『ヘンリー五世』などのケネス・ブラナーらが出演。圧倒的なスケールで活写される戦闘シーンや、極限状況下に置かれた者たちのドラマに引き込まれる。(シネマトゥデイより)
感想
これだけ約束された作品というのも、今日日珍しいかも知れない。「あの」クリストファー・ノーランの新作。しかも舞台は「あの」ダンケルク。もう、見る前から☆5と決めていた…というのは冗談だとしても。
劇場のライトが落とされ、予告編(+もろもろ)が終わり、そうして目の前に広がるフランスの街、ドイツ軍機から撒かれた無数の宣撫ビラ。しまった…IMAXで見るべきだった…。
そうさなあ…。なにから語ろうか。海岸に佇む兵士たち、打ち寄せる波、遠景に見える船と船…サイレンを鳴らしながら急降下してくるストゥーカ(Ju87)…それらすべてが、たとえようもなく「本物」の薫りを漂わせている。本物を作りたかったら、本物を使う。とてもシンプルな解答だ。
『プライベート・ライアン』と比較されそうだけれど、これはまったくの別ものだ。人道主義者のふりをして、じつは残虐シーンを描きたいだけ…と言われるようなスピルバーグ風のところは微塵もない。英雄はたしかにいるけれど、「でも、生きて還ってきただけで立派だよ」って、この映画はそういう映画だ。
なんせ、ドイツ兵はひとりも映されない。たとえ爆撃されても、身体が木っ端微塵に吹っ飛ばされるような場面は映されない。戦闘機のドッグファイトはあれど、トム・ハーディが撃つのは決まって翼かエンジンだ(坂井三郎みたいや!)。こういう描き方は、それはそれでひとつの見識だと思うんだよね。
だから、娯楽性…という点に関しては、ちと評価はむずかしい。いちおう、ハラハラさせるようなシーンも挟まれてはいるけれど、それはむしろ映画全体のリズムを損ねているし…なんだろうな、むしろそういうシーンの方がつまらなく感じられる。
陸海空のシーンでそれぞれ別の時間が走っていることも、娯楽性という点から考えると、ややマイナス。「これ、いつなんだ…?」って考えながら見るから、なにも考えずに「ストーリー」に入り込むということがない(その分、複数の筋が合流した時は、「なるほど!」と膝を打つけれど)
じゃあ、感動はあるのか…と言ったら、劇的な意味での感動もあまりない。「苦しかったけれど、なんとか助かった、ばんざーい!」って、そういう風には作ってない。やっぱり、どこまで行っても退却戦なわけで、少しのほの苦さが口の中に残っている。
かと言って、文学的…というわけでも、ましてやドキュメンタリー的というわけでもない。じゃあいったいなんなのか…って、『ゼロ・グラビティ』のような「体験型」というのが、いちばん近いかも知れない。ただ、複数の筋が同時に走っているから、ああいう風に完全にひとりの人生を体験するという感じでもない…。
それでも、兵士たちが呆然と海の向こうの故郷を見ながら佇んでいるという、それだけの画に圧倒されてしまう。これはそういう映画だ。…と言って、なにかを言い得たことになっているのか(^_^;)>
なにより、これが「5つ星」に値するとすれば、スピットファイアが滑空するシーンが美しかった。それは、単に画的に綺麗だってだけじゃない、造形的にカッコイイってだけじゃない…それまでの積み重ねがあって、そうしてはじめて美しく見える。そして、それはまた、「帰港」のシーンと対にもなっていて…という。
そういうシーンがあるから、僕は今日も劇場に向かう←IMAXで見なきゃ
☆☆☆☆☆(5.0)