劇場版 ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケール―(4.0) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
劇場版 ソードアート・オンライン ―オーディナル・スケール―
 
2017年
 
監督:伊藤智彦
 
概要
 高い人気を誇る川原礫の小説で、テレビアニメ化などメディアミックス展開も好調なシリーズを、川原自ら書き下ろしの新作ストーリーで映画化したアニメーション。AR(拡張現実)型情報端末オーグマーが普及した近未来で、専用ロールプレイングゲーム「オーディナル・スケール」に仕組まれた陰謀をめぐりキリトたちが戦う姿を描く。テレビシリーズでも監督を務めた伊藤智彦が本作も担当。世界観を継承しつつ新たに繰り広げられるストーリー、ガジェットなどに注目。(シネマトゥデイより)
 
感想
 こういうのは評価が難しい。SAOの劇場版としては満点。だって、たとえば総集編とかさ、なんだろうな…オリジナル企画でもTVシリーズの良さが全然出ていなかったりとかさ…これまで色々なアニメの「劇場版」があったわけだけれど、これはちゃんとSAOのファンが納得する作りになっている。そういう意味では満点。
 
 ただ、一本の映画として見たら…正直60点。それは二つの大きな欠点があるように思うから。そしてその欠点はおそらく、もともとSAOが持っているもの。ぼくはSAO自体は好きだけれど、でも100%の肯定ができないのは、そういうところに理由があるんだろうなと思う。
 
 その欠点とは何か。まず、敵役の人物造形が薄っぺらいってこと。TVシリーズでも、茅場晶彦以外の敵役に魅力がなかった。クラディールにしろ、オベイロン(須郷伸之)にしろ、シュピーゲル(新川恭二)にしろ…ストーカー気質の小物をいったい何人敵役として出せば気が済むの?って。一人だったらともかく、ああも続くと世界全体が矮小なものに見えてしまう。
 
 この劇場版でも、敵役の人物造形が薄っぺらいのは変わらない。ああいうキャラクターを描こうとする着眼点自体は良いと思うのだけれど、でもそれを描きたいんなら、そっち側の内面をどれだけ掘り下げられるかに(作品としての出来が)かかっていたと思う。そこを失敗しているんだよね。敵の内面をちゃんと掘り下げられていないから、話自体もすっごくしょうもない話に見えてしまう…。
 
 しかも、同じ薄っぺらいにしても、たとえば「このすば」みたいにメタレベルのツッコミが入るわけでもなく、マジでやっているからなんか冷めてしまう。SAOにはその辺の限界をすごく感じる。
 
 第二に、AR(拡張現実)に対する理解を根本的に欠いているように見えること。ARに着目するところは良い。VRで無敵だったとしても、ARではそうはいかない。だって、ARで動かすのは現実の身体だから。VRとARのその違いは本質的だ。
 
 いくらVRの世界で強くなっても、それが現実の強さに結び付くわけじゃない。それは現代社会においてアクチュアルな問題でもある。ネトゲ廃人がどれだけMMOをやり込んでも、それで実際の格闘技の達人になれるわけじゃない。この映画はその問題に切り込むように見せておいて、でも最終的には結局その問題を棚上げにしてしまう。訓練シーンみたいなものは出てくるけれど、それはあくまでもエクスキューズとして描かれるだけだ。
 
 なんだろうな…アニメでVRってやり易いと思うんだよね。だって、アニメ自体がVRと一緒ですべて作られた世界だから。でも、そこでARを描こうとするならば、VRとARの間の距離を描くことは必須だ。VRではカッコいいアクションが出来たとしても、ARでは重い体を引きずらなければならない。そこの違いを描き切らなきゃ、リアリティが生まれない。ARを描く意味がない。AR戦闘でVRみたいに動いちゃダメなわけで、そこは画的なカッコよさを取るかリアリティを取るかの選択になる。
 
 劇場版SAOはその違いを描こうとしているように見せておいて、結局、前者(画的なカッコよさ)を選んでしまうんだよね。まあ、SAOに後者(リアリティ)を求めても仕方ないのは分かるのだけれど、なんかその辺に限界を感じたな…。どれだけARを主題にしても、SAOのリアリティって結局VRのリアリティなんだよね…っていう。
 
 もちろん、良いところも多い。SAOの世界観やキャラクターデザインはやっぱり魅力的だし、この劇場版でもそうした魅力は存分に発揮されていた。梶浦由記さんの曲も良いしね。最初にAR戦闘が行われる街中のシーンは、挿入歌の効果もあって鳥肌ものだった。「マクロス」っぽいけれど、あのシーンはカッコいいよ。まあ、正直、あそこがピークだったのだが←
 
 それはともかく…SAOで積み残して気になっていたところもちゃんとクリアしているし、これまでの登場人物もほとんど総登場で、ファンサービス満点の映画だ。クライマックスもテンションが上がる。だからSAOの劇場版としては満点。ファンだったら観に行って損はない。まあ…スグはもう少し出番があっても良かったと思うのだが←
 
☆☆☆☆(4.0)