『何者』
(2016)
監督:三浦大輔
概要
『桐島、部活やめるってよ』の原作者である朝井リョウの直木賞受賞作を、演劇ユニット「ポツドール」を主宰する『愛の渦』などの三浦大輔が映画化。就職活動対策のため集まった5人の大学生が、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする本音や自意識によって彼らの関係性が変わっていくさまを描く。就職活動を通じて自分が何者かを模索する学生たちには佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生といった面々がそろい、リアルな就活バトルを繰り広げる。(シネマトゥデイより)
感想
これは…刺さるなあ…。
分析できることはいくらでもある。たとえば同じ作者による『桐島、部活やめるってよ』との共通性。烏丸ギンジは要は桐島(と同じ役回り…不在)でしょ? とか、そういう構造が『桐島』っぽいよね…とか。
あるいは展開面。「物語」に慣らされ/曇らされた目には、「この人の心情はきっとこうかな…」とか読めて/期待してしまうのだけれど、でも実際は全然そうじゃなかったり。その辺のリアリティや、そこでのチクっとした痛みにも、『桐島』っぽさを感じる…とか。
製作面も指摘できる。今年の東宝作品のうち、監督が脚本を兼任している作品は、すべて出来が素晴らしい。『ちはやふる』、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『怒り』…そして、この『何者』。東宝の市川南は、こうした製作パターンに何かを見出したのだろうし、これからの邦画も、監督が脚本を兼ねるのがメインのモードになっていくんじゃないかな…とか。
はたまた演出面。登場人物がみんな美男美女すぎて、たまにトレンディ・ドラマみたいな瞬間が顔を覗かせることもあるけれど、お互いの間のなにげない「空気感」みたいなものを演出する監督の手腕が見事であるとか…。そういう風に色々と言えることはあるんだ。
ただ、この映画はそうした分析的態度…ネットやSNSの隆盛によって前景化されたそうした分析的態度それ自体を白日のもとに晒す。「お前、口だけで何も作ってないじゃん」という鋭いツッコミは、それ自体がナイフのようだ。
でも、この映画で本当に痛いのは、(創造的かつ分析的である点で)両義的、かつ表裏のある主人公自身の問題として、それが跳ね返ってくること。「君自身はそれで本当に良かったの?」って率直な問い掛けは、どんなナイフよりも深く透明に突き刺さってくる。あの最後の有村架純の言葉が…まなざしが…心にグサッとくる。あれは泣く…。
「Yahoo!映画」ではなぜだか評価が低い(2.87)みたいだけれど、僕みたいな「批評家」気取り…みんな一生懸命に生きているのに、それを(一見)安全な(つもりの)ところから斜めに見ている奴…にとっては、心に深く深く突き刺さる映画。
☆☆☆☆☆(5.0)
追記:『何者』はなぜ突き刺さるか…