エモーショナルな瞬間
汗と涙、乱れる髪。かすれながらも絞り出すような歌声。明滅する照明。星空の絨毯のようなサイリウム。揺動するカメラワーク。
このページ下部に掲載している動画の最後、曲が終わったあと、拍手喝さいのなか、撮影者(かな?)が笑ってしまっている声が入っている。それはなにか「凄いものを見てしまった…」というような笑いに思えた。おそらく誰が見ても特別な空間になっていることが分かる。明らかにとてもエモーショナルなものがここにはある。
そもそも彼女たちがなぜこんなテンションになっているか分からないんだけれど、「ツアー・ファイナル」だってことや、ここに映る彼女たちが明らかに満身創痍だってことや(それでも全力だってことや)…なにかそうした諸々のものが、このテンションを生んでいるんだろうなってことは、この映像を見ているだけでも分かる。
良く分からないからこそ、なにが彼女たちをそのような感情に駆り立てるのか気になってしまう。それはまた、総選挙やdocumentaryによって、AKBが多くの人に引っ掛かりを与えてきた理由にも通じるもの。こんなにも彼女たちが感情を昂らせるものって、いったいなんだろう…というね。
なかでも、この動画で、ただひとりコールを受けているショートカットの子(野本ゆめかちゃん)…彼女がコールを受けた瞬間(02:58)に目がフッと変わるのが分かる。そのあと彼女が俯いて涙を堪える姿に、僕は激しく心を揺さぶられる。まるで、48G総選挙の速報で、はじめて名前を呼ばれた時の優月やゆめちを見ているようだった。
なんでひとりだけコールを受けているか、じつはそれも僕はよく分ってない。曲終わりのMCで泣きながら言ってるのも、「サイリウムありがとうございます」ってことだしね。でも…この空間がこの子にとって、とても特別なものだったということだけは、紛れもなくまっすぐに伝わってくる。
そうして、僕はもっと彼女のことを知りたくなった。
ただ、ブログとかを見ても、じつは詳しい事情はよく分からんかった。やっぱりサイリウムのことが書いてあって、もともとアイドルネッサンスの現場では「サイリウム文化」がないってことは分かった。今回のあれがファンのサプライズだったってこともね。
もう一つ、この野本ゆめかちゃんが、今年の6月に加入した新メンバーだってことも分かった。なんでコールがあったのかは結局ブログを読んでも分からんかったけれど、でも、ああいうものが彼女にとって夢だったんだろうなってことは伝わった…というより、それはもう、あの映像を見ただけで伝わってた。
「フレフレサイリウムが大好きで大好きで アイドルネッサンスには サイリウムないから どこかで自分の中で封印してて。でも今日、目の前のサイリウムの海がね…星のようにキラキラ光ってて。ゆめゆめいっぱいでした。夢が叶いました。一生、忘れません。ほんとにアイドルネッサンスにいること、みなさんに出会えたことに感謝しています。。。今日の景色ね…一生…忘れないよ。」
なんだろうな…
僕はもう「48文化」に浸りきってしまっていて、コールとかMIXとかサイリウムに慣れ切ってしまっていて。この動画でも04:28のところで「ここMIXが欲しいな~…」とか思ってしまったりするけれど…本当はそれも当たり前のものじゃなくて。
僕はもうそれに気付くことも滅多にないけれど、すごくエモーショナルなものの種がそこには秘められているんだなって。いや…リクアワの『羽豆岬』の頃にはそうした感覚はあった筈なのだけれど、それもいつしか、ちょっとお約束みたいに感じているところはあって。
普段そういう文化のない「アイドルネッサンス」だからこそ気付くものがあって。本来、「アイドルの力」って、そういうものだと僕は思っていて。どうしようもなく退屈で腐りきった日常でも、アイドルの瞳/耳を通せば、新鮮で光り輝くものだと思えてくる。小さな子どもの頃にそう思えていたであろうようにね。
この子たちの瞳に映っているものが…この子たちの耳に聞こえているものが――たとえそれが普段、僕らが見/聞き慣れているものだとしても――なにかとても新鮮で素晴らしいものに思えて…。
だからこそ、ファンはアイドルを支持するんだ。熱狂的に。