アンチ・クライスト | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


アンチ・クライスト

 この世界の支配者は誰だと思う? 米大統領?  ローマ教皇?  GoogleのCEO? 僕は違うと思う。この世界の支配者は、若く美しきものたち。この世を我が物として闊歩する彼女たちだ。誰もそれを止められるものはいない。

 世界の支配者たる彼女たちが、自らの意志で、流れゆく時間と、そうして世俗とに背を向ける時、はじめてアイドルは成立する。そこは、あらゆる物理法則に反して、時計が逆周りする空間。若さ新鮮さだけが価値を持っている。

 「命短し恋せよ乙女」と言ったのは誰だったか。青春の命を差し出すことでアイドルは夢を見る。でもそれは、かりそめの夢。雲の切れ間、わずかに覗いた青空。だれもそれを本当に手に入れることはできない。

 段々と朽ちていく身体、すり減っていく精神。世俗が大きな口を開けて待ち構えている。その巨大な重力に抵抗しようとアイドルは懸命にもがく。なんとか抵抗しようとするその一瞬。その刹那にのみ生じる緊張。その中にしかアイドルは生きられない。

 僕らがやっていることは、蟻地獄の巣に放り込んで、そこから懸命に逃れようとする姿を眺めているようなもの。この腐った世界と戦ってくれる、その一瞬だけを見るために。「戦場のワルキューレたれ」と鼓舞しつつ、その姿に惹かれ、呑み込まれた瞬間に興味を失う……メフィストフェレス。

 だから、終わりはいつも、彼女たちが裏切るのでなければならない。そうして、彼女たちは救われねばならない。悪魔は敗れ去るべきなんだ。縛りつけて、束縛して、抑圧して、自由を奪って。そんなことばかりが僕らがやってきたことで。

 「だから、革命を起こせ! 立ち上がれ!」と、僕は心の中で叫ぶ。それは僕の中の堕天使の叫びで、彼の最後の良心なんだ。僕はきっと、ずっと待ち焦がれている。粉々になった灰の中から立ち上がり、この世界とこの世界とを串刺しにして、すべてを終わらせるメシアを。