家族はつらいよ(3.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
家族はつらいよ
 
2016年日本
 
監督:山田洋次
 
概要
 『男はつらいよ』シリーズや『たそがれ清兵衛』などの名匠・山田洋次監督によるコメディードラマ。結婚50年を迎えた夫婦に突如として訪れた離婚の危機と、それを機にため込んできた不満が噴き上げる家族たちの姿を描く。ベテラン橋爪功と『御手洗薫の愛と死』などの吉行和子が騒動を引き起こす夫婦にふんし、その脇を西村雅彦、夏川結衣、妻夫木聡、蒼井優といった実力派が固めている。彼らが繰り出す濃密なストーリー展開に加え、笑いをちりばめながら家族の尊さを表現する山田監督の手腕も見もの。(シネマトゥデイより)
 
感想
 タイトルからは、『男はつらいよ』のような作品だと思えるかも知れない。実際、劇中にも『男はつらいよ』のDVDが何気なく(いや、むしろあからさまに)置かれている。また、このキャスティングも、明らかに『東京家族』を意識させる。
 
 こうした自己言及的な身振りは、山田監督自身による山田洋次作品のパロディということを強く意識させる。『東京家族』が小津監督の『東京物語』のパロディだったということを踏まえると、これはパロディのパロディでさえあり得るだろう。
 
 ただ、それが結局、劣化版伊丹十三や劣化版三谷幸喜(三谷さん自身はもっと劣化しているけれど)にしか見えないというのは、どうしたことか。「最悪の悲劇は最高の喜劇である」と言ったのは誰だったかな…。人間の悲しさをおかしみをもって描いて、最後にほろっとさせる。そういう映画…なのか? これは。 
 
 ストーリー展開の仕方などは山田監督らしく巧みだ。ただ、この「ちゃんちゃん♪ 」という終わり方にある違和感。この違和感ってなんだろう。
 
  思えば、寅さんも悲しみを背負ったキャラクターだった。ひとつのところに留まることが出来ない性質で、幸せを手に入れそうになると、自らそれをポーンと放り出してしまう。時々(じゃないかも)「それはちょっとさすがに違うんじゃないか…」とさえ思える行動もする。でも、やはりどこか憎めない、彼の天性の明け透けさ。
 
  そんな寅さんを周囲の優しさが包み込む。みんな「やいのやいの」言いながら、それでも決して見捨てない。さくらのあの全てを包み込むような母性。あのいかにも日本的な「とらや/くるまや」の茶の間は、作られた当時にあってさえ、すでにファンタジーだった(その辺は小津作品と通じるものがあって、それらは「日本的なもの」という抽象的な概念の間をふわふわと浮遊している)。
 
  『男はつらいよ』の構造は、そうしたファンタジーに支えられていた。そうじゃないと、いくら「つらいよ」ったって、つらすぎる。
 
 ところが、後期の『男はつらいよ』は、渥美清の体調不良もあって、満男(吉岡秀隆)のストーリーがメインとなり、扱うテーマとしても現代性を取り入れていった。でも、どこか違和感があった。それはつまり、現代的なテーマと寅さん的ファンタジーとの折り合いの悪さを表していた。
 
 この映画に感じる違和感は、あの違和感と似ている。いかにも現代的なテーマ=熟年離婚を描こうとしている一方で、人間の善良さとか家族の絆を疑い切れないでいる。家族の構成員それぞれにトゲがあっても、その部分は隠し切れない。蒼井優演じる役なんかは、まるでさくらのようだ。
 
 そして、さらに致命的なのは、そのことについて無自覚なように見えること。『時をかける少女』(1983)のあの「古さ」は、大林監督が意図的に仕込んだものだった。それに対して、この作品の古さ=ファンタジー性は、まったく意図しないで自然に入り込んで来ているように見える。
 
 無自覚にしているせいか、ファンタジーに徹することも出来ない。寅さんの明け透けさとは裏腹の、どこか不気味な闇を秘めた吉行和子が、作品全体に暗い影を落としている。そのせいで、劇中ところどころに挟み込まれた「笑い」が(それ自体は笑える部分もあるけれど)軽薄に思えてしまう。
 
 この「ちゃんちゃん♪」という終わり方に感じる違和感も、そうした問題に通じている。前半の吉行和子が不気味な分だけ、あっさりとした処理の仕方に違和感を覚えてしまう。要はカタルシスがないんだ。「本当にそれで良いの?」と。「え?この映画で言いたかったことって、そんなこと?」と。
 
 結局、山田監督は「家族」というものを、どこかで信じている人なんだろう。そこが、たとえば是枝監督なんかとは決定的に違うところで。是枝監督は逆に、「現代において、いったいどうやって家族が成り立つんだろう」ということを徹底的に問い詰める。そういう意味で、彼は「家族」というものを信じたい人だ。
 
 この映画はその部分を問うていないから、シンプルな(ともすれば雑な)使い古されたメッセージを発しているように見えてしまう。
 
☆☆☆★(3.5)
物語2.5
配役4.0
演出4.0
映像3.5
音楽3.5