第94回高校選手権が幕を閉じました。今年はわりと面白かった気がします。
1.
とりわけ、桐光学園の小川航基は高い将来性を感じさせました。3回戦。相手は野洲に7-1で勝った聖和学園に5-0で勝った青森山田。桐光学園は、その青森山田を寄せ付けない強さを見せ、小川に至っては、ほとんど中学生を相手にしているかのようなプレーぶりですらありました。
早々に小川が2ゴールを奪い、2-0。さらにPKを獲得し、勝負は決まったかに思われました。しかし、小川はこのPKを外してしまいます。このあとも、桐光はチャンスを作るのですが決めきれません。かなり一方的な展開になったことで、やや気も緩んだのか、少し中途半端なプレーも目立つようになっていました。
そして、サッカーの魔物は常にこうした瞬間を待ち構えています。後半ロスタイム、セットプレーで一点返した青森山田は、ふわふわとした状態の桐光を尻目にロングスローからもう一点追加。アレヨアレヨという間に同点に追いついてしまったのでした。ちなみに、ロングスローからの得点は、今年の青森山田の最大の武器とも呼べるもので、賛否両論を生みましたが、僕は全然ありだと思っています。
迎えたPK戦、桐光最後のキッカーは、試合中でのPKを外している小川。通常、こうした場面では蹴らせないことも多いのですが、そこはやはりエースに託したのでしょう。しかし、青森山田のGK廣末も只者ではありません。高精度のフィードを武器に、2年生ながら世代別代表に選出されており、小川ともチームメイトなのです。
印象的だったのは、小川が蹴る直前の場面。廣末が「こっちだろ?」と言うように、自らの左サイドを指さしたんです。キッカーにとって、ただでさえ、知っている相手というのはやりづらいものです。しかも、今回は試合中にPKを外しているわけなので、あれはイヤだったろうなと思います。果たして、その策に引っかかったのか、小川は廣末が指を指したのとは逆のサイドに蹴り、そして廣末は迷いなくそのサイドに跳び、そして青森山田が4回戦進出を決めたのでした。
将来的にもプロとして充分やっていけそうな2人(小川はジュビロ内定)の対決。廣末が不敵な笑みとともに左サイドを指さしたあの場面、これから先もまた、ことあるごとに思い出しそうな、そんな予感がしています。
青森山田vs桐光学園(日テレオンデマンド)
2.
その青森山田を破ったのが、決勝まで進んだ國學院久我山。ショートパス主体の小気味よいサッカーを展開するチームで、とくに2年生の澁谷&名倉は、小柄ながらハイレベルのテクニックを誇る好選手です。
僕はこうしたチームが好きなので、決勝戦は國學院寄りで見ていたのですが、しかしながら、この決勝戦は少しがっかりさせるものでした。夏のインターハイ王者東福岡を相手に0-5の完敗を喫したのです。
青森山田に0-5で負けた聖和学園にしろ、その聖和学園に1-7で負けた野洲にしろ、テクニック主体で戦うチームは、諸刃の剣というか、少し脆いところがあります。テクニックが封じられてしまうと、手も足も出なくなってしまうところがあるのですね。
決勝戦の相手となった東福岡は、桐光の小川のように飛び抜けた選手こそ居ないものの(2年生のMF藤川はかなりの選手だと思いますが)、全国一の部員数を誇り、なおかつとても良く鍛えられたチームです。フィジカル面では明らかに東福岡に分がありました。その上、東福岡は國學院のことを良く研究していたのか、どんどんボールサイドにプレッシャーをかけてきます。
ところが、國學院はショートパス主体で仕掛けるチームなので、狭いところ狭いところに入っていこうとします。結果、相手が網をかけているところに、わざわざ引っかかりにいくような形になったんですね。楔のパスも仕掛けのパスも、ことごとく相手に狙われ、カットされる。1人交わしても2人交わしても、次から次へと敵が現れ襲いかかってくる。こぼれ球もことごとく拾われる。あれでは勝つことは難しいです。
逆サイドへの長いパスを狙えば、相手は的を絞れなくなった筈ですが、「ほとんど全く」と言って良いほど、そうした場面は見られませんでした。「自分たちのスタイルを貫く」と言えば聞こえは良いですが、僕にはむしろ、引き出しが少ないように見えました。勝負を取るか、哲学を取るか、この辺は判断が難しいところだなとも思います。
國學院に関しては、精神面の弱さも垣間見えたように思います。敗因としていの一番に精神を挙げるような精神論は僕がもっとも忌み嫌うところでもあるのですが、後半開始早々に2点目を奪われたことで、明らかに國學院の選手たちはガックリきたように見えたのです。運動量が目に見えて落ちていきました。そして、そこからは堰が切れたように失点を重ねたのです。
國學院のこうした姿勢は、端的に言うと、僕には「あきらめてしまった」ように感じられました。監督もそう感じていたらしく「名倉、あきらめてるぞ!」と、名倉に厳しい叱責をとばしていました。これ、TVのレポーターは、「名倉、あきらめるな!」と叱責したと報告していたのですが、僕の耳には明らかに「あきらめてるぞ!」と聞こえました。この2つ、似ているようで全然違いますよね。
とくに日テレってのは、なんでもすごくキレイに収めようとするところがあります。「あきらめちゃいました」ってのは、彼らには決して言えないんです。なぜなら、それは彼らの描く(お涙頂戴の)ストーリーに乗らないからです。彼らはなんでも自分たちのストーリーに乗せようとする。「両チーム死力を尽くして戦いました」みたいな言葉って、彼らの常套句だと思うんですが、それって、単に敗因を覆い隠しているだけだって気が僕はします。
東福岡vs國學院久我山(日テレオンデマンド)
3.
TV局のしょうもない姿勢は、最後のインタビューにも表われていました。「夏冬二冠を、どんな未来につなげていきたいですか?」・・・これに対し、先制点を決めた三宅はしばし沈黙、そして「質問を変えてもらっても良いですか」と返したのでした。
いくらなんでも質問が悪すぎです。だって、三宅は3年生なんですよ。この試合で引退なんです。Jリーグ内定が決まっていたり、2年生だったら、「これからもサッカー頑張ります」で済む話ですが、それ以外の人にとっては、そんな簡単には答えられないでしょう。だって、ここで勝つために全てを捧げてきたんですから。これから先、サッカー続けて行くかどうかも分からないんですから。あまりにも無神経過ぎる質問だったと思います。
twitterでは、三宅のそうした態度を「けしからん」とする意見も見かけました。代表の試合だったら、僕も「もっとちゃんと答えろ」と言うかも知れません。だって、彼らは「僕らの代表」なわけですからね。でも、三宅が代表しているのは、せいぜい東福岡高校だけなんです。「けしからん」なんて怒る資格があるのは、せいぜい東福岡の関係者だけでしょう。それにそもそも、こんなプライベートな質問に答える義務なんて、どんなサッカー選手にだってありゃしませんよ。
せっかくゴールを決めた三宅を困らせ、(一部)バッシングの対象にもしてしまったわけですから、あのインタビュアーはその点でも罪深いと思います。
忘れてはいけないと思うのは、あくまでも主役は(TV局や視聴者ではなく)選手たちであり、試合それ自体だということです。何百、何千万人という人が視聴するTV様で放映されるからと言って、そこを見失っちゃいけない。サッカーに限っても、本末転倒じゃないかと思うようなことはいくらでもあります(W杯の試合開始時間がずらされたりね)。この大会でも、ちゃらちゃらしたタイアップバンドが歌って、あげく試合終了後に的外れなコメントをしてましたが、「なんだかな」って感じがしました。
・・・僕これ、全方位にケンカ売ってますね、まあたまには良いでしょう。
日テレのサッカー中継スタンスはもともと大嫌いなんです。彼らは、駅伝さえ実況できれば、すべてのスポーツ中継ができるって言っている。たしかに、プレーが断続的に行われる野球ならば、それも言えるかも知れません。でも、刻一刻と状況が変わるサッカーでは、それはまったく相応しいやり方ではありません。彼らはいつも資料ばかり読んでいる。『踊る』の織田くんじゃないですが、事件は現場で起こっているんですよ。ピッチから目を離すな、ちゃんと実況しろと、僕はそう言いたいですね。
なんだか最後の最後に水を差され、そんな気分にもさせられました。