長いっす<(__)>
心の距離はどれくらい?
舞台って、人間の身体の霊性というか神聖性というかな…そういうものをすごく感じる芸術だ。そこに身体がある…ということが、その身体が震えて音を生み出し、その振動がこちらに伝わる…ということが、なにかすごく特別なことのように思える。
それの多くは、映像では伝わらない。
だから、なにかそうした神聖な体験…というのは、映像では基本的にあり得ない。舞台と映像は多くのことを共有し、また同時に多くのことが異なっているわけだけれど、その違いはやはり決定的に思える。
1.幕が上がる
横浜ブルク13。観光地みなとみらいにあって、桜木町駅から徒歩1分という立地。そして日曜の昼間。普段ガラガラの劇場に慣れているボクには、ギョッとするような人混みだ。
電車が5分ほど遅れてギリギリの時間だったから、少し焦りながら人混みをかき分けていく。12番劇場、デートスポットには似つかわしくないような客層。女の子も時折見かけるけれど、ほとんどが男性だ。SKE48の舞台「AKB49恋愛禁止条例」…のライブビューイング。
「AKB49」というSKEの舞台。つまり、AKBをモチーフにした漫画を48メンバーが演じたミュージカルを今度はSKEメンバーで再演するという…少し説明が面倒な舞台だ。
そして幕が上がる…。
冒頭、奈和の独白。それから、全員でのダンス&歌唱シーン。
この段階でボクの目は自動的に調節されてしまう。ああ…こういうものとして見れば良いんだなっていうね…。悪いクセだな。みんなホントに頑張って仕上げて来たのは分かるけれど、そりゃあ例えばブロードウェイとは違うわけで、自動的に別のモードに設定してしまうんだな…。これはもう、仕方ない。
でもね…悪くなかったんだよ。いや、むしろ良かったと言うべきなんだろうね。この辺の書き方がボクはどうもネガティブすぎるわけだけれど、でも実際、こういうものとして見れば、すごく良かったんだ。
2.りょはたん♪
なんでボクが横浜ブルク13(日曜14:00の回)に行ったかって、そりゃあやっぱり、Wキャストのうち、綾巴の回を見たかったから。そして、この舞台はなにより綾巴が印象的だった。
これ、綾巴が凄いんだ。
もうさ…ビックリするくらい下手なんだよね(≧∀≦)ノ
でもさ、それは悪い意味じゃないんだ。「下手」って悪い意味でしかありえないだろうって、いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。スキル的には、すごく良くなっていると思う。セリフも歌もそれなりに様になっていたしね。ああ…綾巴頑張ったんだろうな…って。
じゃあなんで「下手だ」って思うかって言うと、もうさ…綾巴以外に見えないんだ。綾巴が喋るたび、歌うたび、こっちが「りょはたん♪」って言いたくなっちゃうようなね。でも、それがすごく良かったんだ。
演じる時って、きっといく通りかのやり方がある。ただ、基本的には、役と本人とをいかに調和させていくか…だとボクは思うんだよね。で、対象に憑依しちゃうような役者もいるわけだけれど、もう一方では、自分の方に役を引きつけるタイプもいて。
綾巴は完全に後者なんだよ。独特の呼吸を持っていて。綾巴にしか見えないんだけれど、でもそれで成立させちゃっているんだ。それって凄いことだとボクは思う。綾巴の下手さってのは、もう全身で「私は北川綾巴です!」って言っているような下手さなんだよね。
それでさ、もの凄く輝いているわけ。舞台上の誰よりもキラキラしていてね。「北川綾巴という存在がここにいるんだ!」って全身全霊で叫んでいてさ。それがなんか時に微笑ましくて、それが時にもの凄く感動的で。
で、ここも肝心なんだけれど、それで作品の世界観を壊していないんだよね。それがどういうことかって言うと、それはちゃんと役をモノにしているってことだと思う。北川綾巴でしかあり得ないんだけれど、吉永寛子って言って全然違和感ないわけ。それって凄いなと。
名作と呼ばれるようなアイドル映画の主演はほとんどつねにこういう子だったし(ボクが思うに、アイドルって自身の身体性が強いから役の身体を呑み込んでしまうんだよね)、プロの役者さんの中にも、こういう役者さんってたまにいるんだよね。ムロくんなんかまさにそうだけれど。
ちと褒めすぎかな…いや、でもたまには良いよね。ボクは綾巴はやっぱり凄いと思ったよ。
3.奈和(古畑奈和)
綾巴とは対照的だったのが、奈和。あの子は上手いんだよね。演技も歌も、すごく上手いんだ。時々、ゾクッとするような表情を見せてね(…って、これはライブビューイングだから感じられた部分でもあるかも知れないけれど)。気がつくと、グッと引き込まれている時があった。
この舞台全体が、後半になるに連れテンションが上がっていく舞台だけれど、奈和もまた、舞台のリズムが乗っていくごとに良い芝居になっていった。だから、前半より後半の方がずっと良い芝居をしていた。たぶん、気持ちが乗っていくと良い芝居をする子なんだね。気持ちで演じるタイプというか。
やっぱり上手い子が主役を張っていると、他の子も安心して演じられる。奈和はさ…もともと能力もあるんだけれど、今回、座長(だよね?)としてやったことで、すごく自信もついたと思う。良い顔をするようになった。
前からこの子は凄い子だなと思っていたけれど、今回の舞台を見て、奈和はSKEを引っ張っていける人になったと思った。もしかしたら、それがすごく大きなことだったかも知れない。
ただ、ひとつ欲を言えば、もう少し上があっても良かったかな。上手いだけにさ。技術の話だから、やっぱり上には上があるんだよね。たとえば、冒頭のシーン。あれ、もっと絶望的になったと思うんだ。もちろん、連続の5公演目だから、大変だったろうけれどね。
4.ちゅり(高柳明音)
赤髪のチュリ…←「灼眼のシャナ」的な(笑)
あの髪でも分かるように、この舞台のリアリティの程度は、ちゅり演じる岡部愛によって決まっている部分がある。あんな髪の研究生はいないよ…っていうね。そういう世界観の話なんだということが、あそこでまず分かる。
(追記:漫画がああなっているからという説明も出来るんだけれど、それを舞台に翻訳するときに、どの程度のリアリティで翻訳するかってのは、常に問題になるわけだよね)
もちろん、男の子が女の子のフリをしてAKBに入るって設定自体がかなりムリがあるんだけれど、それは実際の女の子(奈和)が演じていることによって、ある程度解消されてしまっているわけさ。
だから、リアリティの基準を決める何らかの手がかりが必要なんだけれど、それをちゅりがやっているのね。そのことに対して、本人がどれだけ自覚的だったかは分からないけれど。そこはやっぱり、経験が物を言っていたと思うんだよね。
あの無茶苦茶なスパルタもそうなんだけれど、演技自体も少し非現実的なテンションの高い芝居でさ。この舞台はこういう世界観でやっていますよ…というリアリティの尺度はちゅりの芝居がコントロールしていた。だから、ちゅりの存在ってのはやっぱり大きかったと思うわけで。
ただ、これも奈和と同じなんだけれど、やっぱり上には上があると思うんだ。上手いからこそ、もうひとつ上に来いっていうね。それはなんだろうな…ちゅりの芝居には、ゆらぎ(あるいは迷い)みたいなものが足りないように感じられる時があるというか…。
やり切ってしまうのは良い。時おり見せる悪っるい顔も良かった。ただ、その上でさらに、ゆらぎのようなものがあると演技に深みが出るというかな。これは言葉で説明するの難しいのだけれど。その辺かな。まあ、ちゅりっぽくて良かったけれどね。
5.たむたむ(二村春香)
あと印象的だったのは、はるたむの…身体。いや、なんかこう書くといやらしい意味に聞こえるかも知れんけれど、いやらしい意味です←
でも、この舞台のはるたむは、すごい真剣な表情を見せているわけ。それでもさ…あの身体が…って、こんなこと言っていて大丈夫か( ;¬_¬)
まあ、いいか。はるたむが真面目に演技している時でも、ぶっちゃけた話、胸に目がいっちゃうときがあるわけ。いや、ボク自身はむしろ小ぶりな方が…って、そんな話はどうでも良いんだけれど、それでも目が行っちゃうわけさ。
それただの「男の性」じゃねーかって話なんだけれど、それはたしかにそうなんだけれど…それはたとえば、『紙の月』の宮沢りえさんにも感じたことであって。すごく地味な服を着ているんだけれど、それでいて、なにかすごく女性の身体を感じさせるというか。それはあの映画に絶対に欠かせないもので。
この舞台は、もちろんそうした主題ではないのだけれど…。あるいはそれは、たとえば蜷川さんの舞台に出ていた多部未華子ちゃん*にも感じたことで。最初にも書いたように舞台って身体性の芸術だとボクは思っているわけだけれど、その身体性をすごく感じさせるというかな。元来、身体ってのは神聖なものだってことを感じさせるというか。
(*訂正:蜷川さんの舞台に出た時じゃなくて、宮本亜門さんの『サロメ』に出た時だった。そう…あれはまさにサロメだったんだよね)
で、そうした身体性ってのは、性と基本的には切り離せないんだよね。
天岩戸の神話で、アメノウズメが踊り狂う場面があって。あそこでもやっぱり、胸がどうって描写が出てくるんだよね。女性の胸ってのは、もちろん性的なもの(だから隠すわけ)なんだけれど、その性的なものそれ自体が神聖性を帯びるというか、そんな瞬間って絶対にあって。単純なエロを超越してしまう瞬間というかね。
あの神話はもっと過激…というかそういう描写が出てくるんだけれど、あれ、絵とかでリアルに描こうと思ったら、かなりエグイと思うんだよね。それでも、神話の中ではあれは神聖な儀式として描かれているわけで。太古、身体と性ってのは今よりももっとずっと神聖なものだったわけで。はるたむの芝居は、なんかそんなことを感じさせたんだな…。
だから、はるたむのあの身体は、じつは(グラビアのみならず)女優にとっても重要な武器なんじゃないかと思えて。それは別にセクシーな演技が向いているとかそういう意味じゃなくて、真剣な演技をして、なおかつそこに身体性…身体の神聖性を感じさせることが出来るというか…。巫女的な何かを感じたわけさ。
…って、なんか、こんな話していて大丈夫なのか、ボクは(^_^;)
もちろん女優さんにも色んなタイプがいるわけで、それだけじゃないとは思うのだけれどね。
あるいは、もちろん身体性といっても胸だけじゃないわけで。(これ、もうついでだから全部言っちゃおうか)たとえば今のSKE公演のいちばんの見どころのひとつは、ゆめち(野口由芽)の太ももだとボクは思っているのだけれど←
あれはまた意味合いも少し違って。若さの象徴なんだよね。この世界はすべて自分たちを中心に回っているんだ…っていうような若さのね。たとえば女子高生は太ももを露出することで「世界は私たちのものだ!」って主張するわけでしょ(いや、本人たちの意識がそうかどうかは別として)。
あれは世界を統べる武器なわけでさ。そしてそれはまた、その力を移植したAKBが元来持っていた力でもあって。だからこそ、『スカートひらり』なんであって。ゆめちの太ももってのは、なにかそうした力の象徴みたいに見えるんだな…。だから、ボクには劇場のゆめちが、この世界を統べる王のように見える。
…う~む…これ書くべきだったのか…( ;¬_¬)
まあ、いいか。
6.いくつかのこと
りおん(東李苑)はね~…やっぱり上手いんだよ。歌は圧巻だし、息の使い方もすごい上手いわけ。それにね~、あの子はポテンシャルというかスケールの大きさを感じさせるんだな。もっと大きい役を与えれば、きっともっと良い演技をしてくれるだろう…って、そんな予感をさせるんだ。
ホラー映画見まくって役作りをしていたらしい梅ちゃん(梅本まどか)。演技も真面目な梅ちゃんらしい誠実なものだった。ただ、呪いってSKEではセンシティブな話題だから…最初、会場がざわついていたぞ(笑)
みなるん(大場美奈)とすーちゃん(佐藤すみれ)は笑いを取りに来る役だったけれど、滑ってたことの方が多いかな。やっぱり、MCやバラエティでの笑いと、役で取りに来る笑いって、また少し違うんだよね。
笑いを取るって、たぶん演技の中でいちばん難しいことのひとつで。まあ、なかには小倉久寛さん(劇団SET)のように、ただ出てくるだけで笑いが取れちゃう人も居るんだけれどね。
むしろ、あの2人は今回、シリアスな顔をしていた時の方がずっと良かったな…。そういう顔できるんじゃんっていうね。ネ申TVで今井さんの稽古を受けて、「演技はもういいです」って言っていた、あのみなるんがね~…(* ̄艸 ̄)
コメディエンヌの才能を発揮していたのがみきてぃ(矢方美紀)。あの子はモノマネ得意なだけあって、声の使い方をよく分かっているんだよね。キーンと金属的な高い音で入ってくるから、パッと頭に入ってくる。だからスッと笑いが取れる。
短い出番で印象を残したのがごーどん(神門沙樹)。まあ、あれは置きに来ているところだから、確実に笑いが取れる場面ではあるんだけれどね。それでも、あのキャラクター(+自分の出身地)を生かして、ちゃんと笑いを取れていた。それに、やっぱりすごい美人。舞台映えする。
それから、ゆづき(日高優月)もカメラに抜かれる機会は多くなかったけれど、あ…良い表情しているな…って思ったことが何度かあった。それはじゅなっこ(山田樹奈)やめいめい(酒井萌衣)にも言えることだけれど。
あと、るみ(加藤るみ)とくま(熊崎晴香)ね。あのリアルごますりコンビ(笑)小悪党な感じがね、良く出ていた。あの辺の役どころの芝居が安定していると、舞台ってグッと引き締まってくるから、その点でもすごく良かったと思うな。
(追記:気が付けばらんらんのことを書き忘れていた…なんだろう…自身のキャラを活かしたキャラ作りもしていたと思うし、ダンスのキレもあったと思うのだけれど…なんか書き忘れていた( ;¬_¬))
7.くまくまくま
で、いまくまの話をしたわけだけれど…。もう少しだけ。
ボクがなんでこのライブビューイングを見に行ったかと言えば、それはやっぱり「くまが…」ってのが大きいわけ。日曜14:00の回を選んだってのは、綾巴の回だからなんだけれど、そもそも見に行こうって決め手になったのは、くまなんだよね。
この数週間、あれだけ毎日頑張って上げていたブログやぐぐたすの更新も滞りがちになり(モバメは割りと定期的に来ていたけれどね)、ぐぐたすを上げる時も深夜になったり…公演にも出てこられないしね。ああ、舞台稽古頑張っているんだろうなって。
でもさ、やっぱり寂しいところもあるわけ。本人はきっとファンに良いものを見てもらいたいって気持ちで頑張っているのに、ボクは長い長い出征に出ている兵士の奥さんのように、寂しくなってしまうわけさ。
ボクはたぶん、くま好きすぎるんだ。それはあまり宜しくないなと…思っているのだけれど( ;¬_¬)
(もう推しは作んないと決めているから)
くまのそうしたすべては舞台のためにやっているわけだから…それを見ないってことは、なんか、くまから遠く離れて行ってしまうような気がしていたんだな。で、結局、見に行った(ライブビューイングだけれど)。
くまは…良い顔をしていた。ホントにね。特に最後の方の泣き顔は、これまでで最高の顔だった。あの顔を見られただけで、ボクは見に行った甲斐があるよ。