『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
THE IMITATION GAME
2014年、イギリス/アメリカ、115分
監督:モルテン・ティルドゥム
主演:ベネディクト・カンバーバッチ
概要
第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。監督は『ヘッドハンター』などのモルテン・ティルドゥム。キーラ・ナイトレイをはじめ、『イノセント・ガーデン』などのマシュー・グード、『裏切りのサーカス』などのマーク・ストロングら実力派が共演。(シネマトゥデイより)
感想
天才というものに生まれたかった…とよく思う。とりわけ数学的能力に恵まれた天才に。突出した計算力、記憶力…なにかそのようなもの。
「機械の体なんていらないよ!」と言ったのは、銀河鉄道999の鉄郎(のマネをしたラーメンズ片桐さん)だけれど、ボクは機械の頭が欲しいと思う。だからかな…いつもiPadを持ち歩いている。まるで自分の体の一部のようにね。
1.
この映画は、そんなコンピュータの基礎理論構築に多大な貢献を果たしたチューリングの話だ。彼もまた人類史に名前を残した数学的天才のひとり。
第二次大戦における英米の凄みは、こうした数学的天才たちを組織的に運用して戦争に利用し(そして勝利し)たこと…だとボクは思っている。
あの頃、日本はなにをやっていたか…と言えば、「統帥権!」とか言って、軍人がすべてを決めようとしていたわけだよね。あるいは、八木アンテナを眠らせてたりね。
それに対して、英米ではオペレーショナル・リサーチなんかをして、職業軍人が民間出身者の意見に従って戦略を決めてたりするわけだ。その合理的精神にボクは身震いすら覚える。
それから、もちろんマンハッタン計画もそうだし、この映画に登場するGC&CS(政府暗号学校)もそのひとつだろう。彼らには、なにか数学的天才に対する信奉のようなものがあるんじゃないか…と思える時がある。
2.
この映画から、なにかそうした合理的精神が感じ取れるか…と言ったらボクはそうじゃないと思う。全体のプロットはほとんど『ビューティフル・マインド』を裏返しにしたみたいだし、そこに同性愛や女性差別という社会的要素を絡ませて、あたかも社会派の映画のように見せているだけだ。
(以下ネタバレ…というか史実関連の話)
この映画のチューリングは孤高の天才で、自分の信じた道を貫こうとするんだけれど、周りの理解は得られない。やがて彼が正しかったことが分かって…っていう風に描かれている。この映画を見ている人は、彼が何から何までこなしたと思うかも知れない。
もちろんチューリングは偉大で、彼が突破口を開いたわけだけれど、この映画はチューリングひとりにすべてを背負わせ過ぎなんだ。実際には多くの天才たちが寄ってたかってどんどんと成果を挙げて行ったわけで、そこにこそイギリスの凄みがあったというのに。
だから、この映画の描写はあまりにも文学的/映画的にすぎると思う。
脚本家は、そうした歴史的整合性に関する批判に対して、「ある映画を語るときに『ファクトチェック』という言葉を使うのであれば、その人は何というかアートの仕組みを根本的に誤解している。モネの『睡蓮』をファクトチェックする人はいない」と反論している。
ボクは、アートというあやふやなものを根拠に持ち出すこの姿勢そのものが、数学的天才たちの姿勢とはかけ離れているように感じる。この映画からは、あの合理的精神が感じられない。なんと言うか…too emotionalなんだ。だから、真の凄みが感じられない。
チューリングの戦後の不遇はイギリスという国の閉鎖性と、その後の凋落を予感させるものだけれど、結局、この映画自体がファンタジーに過ぎんから、それもあまり胸に迫るものではなかったな…。
ただひとつ、カンバーバッチは掛け値なしに素晴らしい。
☆☆☆☆(4.0)
物語☆☆☆★
配役☆☆☆☆☆
演出☆☆☆☆
映像☆☆☆☆
音楽☆☆☆☆