幕が上がる徒然1 | 想像上のLand's berry

想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


幕が上がる徒然1

 『幕が上がる』のショックをいまだに引きずっている。あの映画の…あの奇跡みたいな映画のショックを。なんだろうな…口を開けばあの映画に対する賛辞ばかりが出てきて…でもそれは少し寂しく悲しいもので…だから言葉自体が少なくなってしまう。

 だからこそ、書けるだけのことはここに書いてしまおうと思う。じゃないと、気持ちが切り替えられないから(これがSKEの映画だったらどれだけ幸せだっただろう)。

1.
「幕が上がる これはアイドル映画ではない」(西日本新聞)

 よく、この映画を褒めるのに「アイドル映画じゃないから素晴らしい」という言葉を用いる評を見かける。上の記事なんてその典型的な例だ。

 ボクは違うと思う。この映画はむしろ「アイドル映画だから素晴らしい」んだ。

 『時をかける少女』をはじめとして、80年代には数々のアイドル映画の傑作が存在していた。90年代に入って、アイドルは冬の時代へと突入する。アイドル×変身やアイドル×ホラーという定番が生まれたのはこの時代だったかも知れない。ただしそれは、王道アイドル映画の衰退と裏腹だった。

 それから、90年代末から2000年代初頭にかけて、スピードやモーニング娘などのグループを起用したアイドル映画が作られた…ボクも見た筈だけれど、どれもあまり印象に残っていない。それらはグループの変遷と共に振り返られることもなくなるような、耐久性のない作品だった。

 2000年代後半からアイドル界を席巻した48は、そうした「アイドル映画」ではなく、自らをテーマにした「Documentary」を制作した。もはや、王道アイドル映画は風前の灯火かのように思えた。ああいう映画はもう見られないんだとボクは思っていた。

 そこに現れたのが『幕が上がる』だった。それは、かつての80年代黄金期アイドル映画の薫りを漂わせていた*。そこにこそ、この映画の重要性があるのだし、だからこそ、この映画は「アイドル映画」という文脈を抜きにしては語れないんだ。

(*それは本編の雰囲気だけじゃなく、たとえばラストの主題歌を役柄そのままに本人が歌うなんて『時をかける少女』そのものだし、エンドロールでNGやメイキングのような映像を見せる手法もそう。それに、監督の本広さんはこの映画を撮る前に、[時をかける少女の監督]大林さんに相談していたらしい。本広さんはもともと、女の子撮るの下手だから)。

2.
 それに加えて、この映画が「奇跡みたいな映画」だとボクが言うのは、これがまさにアイドル映画だからこそ出来た映画だからだ。

 「アイドル」とは何か…というのは色々と考えられるのだけれど、ひとつには「女優」とは違うってことがある。もちろん、天性の資質を持った子や将来的には女優として大成する子もいるんだけれど、やっぱり専業じゃないから、基本的には演技が拙いわけ。それでも、粗削りでも、全力で頑張る姿が輝きを生んで、それが魅力になる。

 アイドルってのは、そうして成長の過程を見せるもの。この映画の「ももクロ」も最初は演技が拙いわけさ。ホントにこれで大丈夫かな…っていうね。でもさ…物語が進んでいくごとに、主人公たちが成長していくごとに、本人たちも成長していくんだよね。それが手に取るように分かるわけ。

 そして、はじめは不調和を起こしていた本人と役柄が段々と調和していくに連れて、物語上でも(色々とすれ違ったりもしていた)5人が調和していく…。

 そうして、黒木華さんという素晴らしい添え木が居なくなっても、自分たちだけで立って行けるようになるという…それは画面上もそうなっているんだよね。最初は黒木華さんでもっていた画面が、5人だけでもつようになる。

 だからこれは、物語と実際とが完全にリンクしている映画であって、それは「順撮り」(最初のシーンから順番に撮っていくやり方)という時間のかかる手法のなせるわざでもあるわけだけれど、その一方では、演技に関しては拙いアイドルだからこそ出来たことでもあって。しかもそれは、人生で一回きり出来ることなんだよね。
 
 さっきも書いたように、アイドルとは成長の過程を見せるもの。この映画は単に80年代アイドル映画のような雰囲気を漂わせているだけじゃない。物語で「成長」を描いて見せて、さらにそれを演じる過程で「成長」していく本人たちをも見せているんだ。

 だからこれは、まぎれもなく「アイドル映画」だと思うし、だからこそ、これだけ素晴らしいんだとボクは思う。これは、はじめから全てコントロールしようと思ったって出来る映画じゃない。色んなことが重なってはじめて出来る映画だ。だからこそ、これは奇跡みたいな映画だってボクは思うんだ。

つづく