アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48
2015年日本、116分
監督:石原真
概要
AKB48の初の姉妹グループとして、2008年に名古屋で結成されたSKE48の6年間の軌跡を追ったドキュメンタリー。第1期メンバーのオーディションの記録映像、メンバー大量卒業の裏で起きたある出来事、個々のメンバーが知名度を徐々に上げてきた理由や、松井珠理奈と松井玲奈のW松井が語るSKE48の未来など、貴重な映像やインタビューSKE48の真実をひもといていく。メンバーたちのひたむきな姿に心を動かされる。(シネマトゥデイより)
感想
『幕が上がる』を見て、ボクが悔し涙を流したのは、たぶん、またひとつ別の理由がある。実はその日、ボクはこっちを先に見ていたんだ。だから、ここで書いているのも、その前に書いたもの。
1.
SKEとは何だろう…。
その答えは、人によってそれぞれだ。きっと、100人居れば100人分のSKEがそこにはある。それらすべてのSKEを捉えるには、それらすべてのSKEを生きなければならない。
だけど、そんなことは誰にも出来ないから、みんな耳をそば立てる。だからそれぞれのSKEには、ある瞬間の他の人のSKEがちょっとずつ混じっている。時にそれらは共鳴し、時にそれらは軋みをあげる。
2.
この映画は、まるでSKE学校のパンフレットのようだ。色んなところに目配せをしていて、でも観点(あるいはテーマ)というものがない。あえて言えば、それは「歴史」になるのだろうけれど、1期2期3期4期5期と来て、6期に行くかと思いきやドラフトに行っちゃう(大組閣以前の兼任メンも登場しない)。一貫していないんだ。
焦点が当たっているものはいくつか見当たる。「SKE立ち上げ」とか「厳しいレッスン」とか「総選挙」とか「その後の未来」とかね。でもさ…無限に時間があるわけじゃないから、こういう風に焦点がバラけると、どうしても個々は浅いものにならざるを得ない。
たとえばさ…総選挙だったら、2013の初代E旋風とか、物語になり得るものはいくらでもあるわけ(それが描かれないから、花音が「Eは最初評価されてなかった」って言ったきり、初代Eは放りっぱなしになっている)。でもそうしたものすべてを取り上げるわけには、もちろんいかないわけで。だからこそ、観点が必要なんだ。
観点…あるいは全体を貫くテーマというかね。それに乗らないものはすべて外すくらいの覚悟でやらなければ、その選択に説得力は生まれないし、逆に言えば、そこをしっかりやれば、作品の完成度自体がその選択に説得力を与えるわけ。これがやりたかったから、あれが外れたんだなっていうね。
ボクはあれも入れろこれも入れろ…と言っているわけじゃない。そうじゃなくて、それは出来ないんだから、なにか明確な論理をもって切れと言っているんだ。この映画は、なにかそうして浮かび上がってくるものがないんだな…悪いけれど。
だからパンフレット的な印象がしてしまうわけだし、だからこそ「あれが外れたこれが外れた」って、そんなことが気になってしまう。作品に何が入るか何が入らないかってのは、作品自体の論理で決まるけれど、パンフレットに何が入るかなんて、クライアントが何をアピールしたいかでしか決まらないからね。
つまり、監督自身がどう見ているか…ということが問われているんだ。監督自身はSKEをどう見ているんだ…ということがね。監督自身にとってSKEとは何なのだ…と。それが見えないから、ただただ事象を追うだけの映像になってしまう。
ドキュメンタリーってそういうものだと思う? ボクはそうは思わない。あらかじめ決められたストーリーに従って素材を集めるにせよ、集めた素材からストーリーを組み立てるにせよ、そこには監督の見方というものが入ってくる筈なんだ。それを示せよと。
それにね…ぶっちゃけた話が、これは裏側と名付けられた表というか、ショー化された裏側だよね。実はこの裏側を描くのにさらに裏側がある筈で。そういうところ(タブー)に踏み込まない限り、これは真のドキュメンタリーにはなり得ないし、グサッと心を突き刺すこともない(タブーに踏み込めないんだったら、ドキュメンタリーなんて作る意味あんのかよと)。
それに、最初と最後でセンター交代の話が出てきて、物語的にはこれから何かが変わっていく…と予感させるように作っているのだけれど、でも新曲で再びセンターが戻ったあとだから、この映画自体がすでにout of date(時代遅れ)になってしまっている。
常に動きのあるものについてのドキュメンタリーなわけだから、その都度その都度で切っていくしかないのは分かるのだけれど、そのことについて、もっと自覚的でも良かった。単にあとから新しい映像を継ぎ足すだけじゃアクチュアルなものになんてなり得ないんだ。
これね。ヲタが見ると(はじめての映像も出てくるけれど)一種の入門編みたいに見えるわけ。要はパンフレットだからね。だから、ヲタ向け要素ってのは、じつは皮肉にも卒業生のその後くらいしかない(卒業生のその後なんてのもまるで学校パンフそのものだけれど)。
それじゃあ他の人にはどうか…と言えば、端からSKEに興味を持ってくれている人には良いかも知れない。パンフレットだからね。でも、作品としてちゃんと閉じられたものになっていないから、それ以上でもそれ以下でもない。
3.
…と、ここまで書いたところで『幕が上がる』を見に行った。そして、これ以上なにかを書く気をなくしてしまったんだ。その翌日、ボクはもう一度『幕が上がる』を見に行った。あのね…言葉(映画自体が持っているメッセージ)の強度が全然違うのよ…。この映画じゃ、ボクは泣けない。
☆☆☆(3.0)
(ドキュメンタリーだから詳細評価は省略)