アメリカン・スナイパー(4.0) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
『アメリカン・スナイパー』
AMERICAN SNIPER
 
2014年アメリカ、132分
 
監督:クリント・イーストウッド
 
主演:ブラッドリー・クーパー
 
概要
 アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった彼が、イラク戦争で数々の戦果を挙げながらも心に傷を負っていくさまを見つめる。メガホンを取るのは、『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッド。『世界にひとつのプレイブック』などのブラッドリー・クーパーが主演を務め、プロデューサーとしても名を連ねている。戦争とは何かを問うテーマに加え、壮絶な戦闘描写も見もの。(シネマトゥデイより)
 
感想
 イーストウッド監督作品は、ボクはどうも好きになれない。どれだけ世間から評価を受けていたとしても、ボクは「良い」と思えたことがないんだ。それは別に、自分の視点を特権化して、彼が「大したことない監督だ」って言いたいわけじゃなくて。
 
 ボクにとって彼は、(ボクの嫌いな)山崎貴監督と通じる何かを感じさせる、そんな監督に過ぎない。たとえ作品の規模とか質は違っていたとしてもね。
 
 この映画は「愛国的」だと賛否を生んでいるようだけれど、それ自体はボクは気にならない。前から言っているように、誰もがそういう風に(自分の側から)描く権利があると思っているし、真に中立的な視点など理想主義者がいだく幻想に過ぎないとも思う。
 
 それに、この映画が特に戦争を美化しているとも思わないし、くそ偽善者ぶった『永遠の0』のように卑怯な作品だとも思わない。
 
 だから、それは別に良いんだけれども…。
 
 ボクには、彼の描くこのノスタルジー(アメリカアメリカ)や作り物の戦場(あの映画的ライティング!)や場違いな娯楽性(西部劇か!)や取ってつけたような苦悩の描写(実話だとしてもね)や…それらすべてが、どうしようもなく、くだらなく見えてしまうんだ。
 
 イカれ具合だったら『ハート・ロッカー』には及ばないし、戦場の迫真性だったら『ブラックホーク・ダウン』に及ばない。『フューリー』の深い痛みの感覚には程遠いし、同じように狙撃兵を描いた『スターリングラード』に比べればあまりにも単純だ。帰還兵の苦悩も『7月4日に生まれて』など昔からある主題で、それらに比べて特に目新しいところはない。
 
 それに、もはや「アメリカ」って主題がアクチュアルなものでなくなっている…というのもボクは凄く感じた。とりわけ9/11以降、アメリカってのは世界の中心だったわけだけれど、いま世界中の話題を集めるシリアでもイラクでもウクライナでもその存在感は薄い。
 
(余談:たとえば、例のイスラム国は、この映画でも触れられていたザルカウィの「イラクのアルカイダ」の後継なわけだけれど、もともとのアルカイダが対米テロを重視していたのとは違って、やっていることはアラブ地域の征服だ。地上戦で戦っている相手もシリア政府だったり反政府組織だったりイラク政府だったりクルド人勢力だったりする)
 
 もちろん、アメリカが「アメリカ」を描くってのは当たり前なんだけれど、「アメリカ的なものが是か非か」って問いは、もはや世界的にはアクチュアルな問いではなくなっているように思える(これから先ずっとそうだ…というわけではないだろうけれど)。
 
 この映画も、実話を基に、ひとりの兵士の人生としてイラク戦争を描いた…ということは評価できるのだけれど、なにかアメリカ国内だけで盛り上がる映画のような、そんな印象を受けた。
 
 ただ、ひとつだけ、エンドロール前のシーン(実際の映像を使っているのかな)と無音のエンドロールは少し胸を打った。アメリカ人でないボクでさえ厳粛な気持ちにさせる。あれは映画を儀式にしてしまっているのだね…。
 
 かつて礼拝の対象だった芸術(たとえば祭壇画)は、いつしか鑑賞の対象になった。それを彼は、映画という媒体を用いて再び引っくり返したんだ。
 
☆☆☆☆(4.0)
物語☆☆☆★
配役☆☆☆★
演出☆☆☆☆
映像☆☆☆☆
音楽☆☆☆☆★