『フォックスキャッチャー』
FOXCATCHER
2014年アメリカ、135分
監督:ベネット・ミラー
主演:スティーヴ・カレル
概要
デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンが起こした殺人事件を映画化した実録ドラマ。ジョン・デュポンが結成したレスリングチームに引き抜かれた五輪メダリストの兄弟が、彼の知られざる姿を知った果てに悲劇に見舞われる。監督は『カポーティ』などのベネット・ミラー。『31年目の夫婦げんか』などのスティーヴ・カレルをはじめ、チャニング・テイタムやマーク・ラファロら実力派が共演する。彼らの鬼気迫る演技に圧倒される。(シネマトゥデイより)
感想
いま、もっとも信頼できる映画監督って誰だろう。
イーストウッド?(I don't like him)
スピルバーグ?(perhaps)
ノーラン?(perhaps)
ベイ?(never mind)
ゴダール?(who knows?)
what about…
ベネット・ミラーはどうだろう。
以前、レビューした『カポーティ』は評価5だったし、レビューを書かなかった『マネーボール』も実は評価5だった。評価5だったらレビューしろって話なんだけれど、彼の作品ってこう…なんか批評を受け付けないようなところがあるんだ。
言葉で括ってしまうと、余白のようなものがすべて落ちてしまう。そして、彼の作品では、その余白こそがもっとも重要なものなんだ…という気がする。骨太な演出でありながら、そこには静かな静かな余白があって。
今作でも、「父と子」と「母と子」と「兄と弟」と「愛国」と「愛」とって、それだけでは名指しできないものがある。こう…『カポーティ』では貧困層の、今作では富裕層の闇が反映されているところは、少し松本清張的なものを感じさせるところもあるんだけれどね。
ひとつだけはっきり言えるのは、この監督の作品では、「男」ってものにかかっている比重が非常に大きいってこと。と言うより…ほとんど男のみで構成されていると言ってしまっても良いかも知れない。これはどの作品を見てもそう。
たぶん、女の子を描くことにほとんど興味がないんだろうと思う。
ボク自身は性的な意味では男には全く興味はないけれど、アイドルに傾斜していく心とは裏腹に、なんか一方では少し女嫌いになっているんじゃないかって気がしていて…。男の子の方が素直で安心できるしホッとすると言うか(だから分かるって言いたいわけではないのだけれどね)。
ただ、ここで語られるのは、そうした無垢で純真な男の子の世界ってわけでもなく…。
男社会の「栄光」とか「挫折」とか「名誉」とか「嫉妬」とか「面子」とか、言葉にしたら簡単なそんなものにこびりついている、深い深い森のようなドス黒いもの…あるいは『ハンターxハンター』のイルミ→キルアとか、ヒソカ→ゴンとかね。富樫さんが描くああいうのに近い何かも感じさせる。
まあ、これをどこまで実話として捉えていいのか…という問題はあるにせよね。決してエモーショナルに描かずに、これだけ深く犯罪者の内面を抉っていくところに、この監督の凄みを感じる。こういうのやらせたら、たぶん彼がNo.1なんだよね。
なんか、(この記事の)最後、あまりにも陳腐な言葉で締めくくってしまったけれど。
☆☆☆☆☆(5.0)