ブラジル 1 - 7 ドイツ
名前だけでは勝てない。元寇が敗れた時、無敵艦隊が敗れた時、バルチック艦隊が敗れた時、それもこんな感じだったのだろうか。
ネイマールが居ないとか、T・シウヴァが居ないとか、そんなことが言い訳にしか過ぎなくなってしまうほどのドイツの実力。ドイツの方が組織が優れているのに、1対1の実力も明らかにドイツの方が上回っていた。
想いだけでは勝てない。64年ぶりの自国開催とか、ネイマールのためにとか、そんなセンチメンタリズムを少しも許さないような残酷な現実。
それでも、序盤はなんとか戦えていた。大歓声に後押しされ、ドイツを押し込んでいたブラジル。でも、その時からすでに崩壊の兆候はあった。ドイツの方がはるかに効率良く、小気味よくゴール前に進出していた。
均衡が破れたのは、セットプレーからだった。またまたミュラー、今大会5点目。なぜだかどフリーになっていた。この時から、ブラジルの守備陣はもうおかしかったのかも知れない。
前半の早い段階。まだ1点差、それなのに、妙に焦って前がかりになるブラジル。戦術なんてどこへやら、前線はどんどん行っちゃうし、後ろもどんどん行ってしまう。そのくせ、全体を押し上げるわけでもなく、残っているヤツは残っているという状態で、まるで統一が取れていなかった。
ダヴィド・ルイスの動きはまるでむちゃくちゃで、子供がやるTVゲームのように全てのボールを狩りに行っていた。ダンテはただの棒に過ぎなかったし、ルイス・グスタヴォやフェルナンジーニョはピッチのどこにも居なかった。
そして、ドイツ攻撃陣の前には、(グデーリアン率いるドイツ機甲師団の前に、無防備なアルデンヌの森が広がっていたように)広大なスペースが広がっていた。
精強なドイツを相手にそんなことをすればどうなるか。それは火を見るよりも明らかだった。あっという間に2点目。頭が真っ白になるブラジル。そこから5点目(!)が入るまで、さほど時間はかからなかった。たぶん、ブラジルの選手たちは、この時間帯のことを覚えていないんじゃないかと思う。
まるでコートジボワール戦やコロンビア戦後半の日本を見ているようだった。ブラジルでさえ、ああなってしまう。プレッシャーというものの恐ろしさ。勝負のタイミングを誤ってしまうということの怖さ。戦線が崩壊してしまうということの怖さ。
戦において強勢を誇った軍隊が、ある瞬間をきっかけに総崩れを起こすことがある。それがどういう時か…というのが、この試合を見ていて少し分かった気がする。ワーテルローもこんな感じだったのだろうか。ヒ水の戦いもこんな感じだったのだろうか…。
悠久の時が流れている。そしてまた、いくばくかの涙がそこに加えられた。この試合は、観ているのが辛かった。