『偶像のかなた31』
木崎ゆりあ
(SKE48/チームS/総選挙22位)
「Love and Peace」
素直に甘えたり
あんまり可愛い事も言えないけど、
それでも好きって
言ってくれてありがとう。
―木崎ゆりあ―
「いまここに居る奇跡」
1.予感
いつから、ゆりあはこんなに高く跳べるようになったのだろう。
名作バスケ漫画『スラムダンク』で、花道を観察した丸ゴリが「ズイブン長えこと宙にいるんだな」と感嘆する場面がある。湘北のチームメイトたちは、そんな花道を見慣れているから、いまさら驚かないんだけど、そのジャンプ力(と着地してすぐ速攻の先頭を駆ける脚力)は、全国トップの山王の主力をも驚かせるものだった…という話。
今のゆりあを見ていると、何となくそんなことが思い起こされる。振り返ってみれば、総選挙の時、ボクはこんなことを書いている。
おぎちゃんが卒業した時に、ゆりあがブログに上げていた、おそろの服を着て肩を組む2人の後ろ姿(ちゅり撮影)。ボクは、あれが、今のゆりあの心象風景なんだと思う。子ども時代のゆりあは、おぎちゃんと共に去っていき、自分はひとり残されている。くーみんも卒業して、おバカばかりやっていた暖かな時代は去っていった。いまのゆりあは、どこか「孤高」という影を纏っている気がする。それでも残ったゆりあだけに、選抜入りを逃したのは悔しかった筈、ホントに悔しかった筈だけど、そこで閃いてみせた「Wピース」。まさにあの瞬間、ゆりあは別の次元に入った気がする。あの壇上で、ゆりあはひとつ階段を昇ってみせた。ちゃんと計算も出来たし、もはや単なるおバカキャラじゃない。ゆりあはきっと、真のアイドルへと急速に変貌を遂げつつある。
あれから約半年。いまだに2トップは強力だし、同期の須田ちゃん(須田亜香里)は一足早く本店の16人選抜に入り、さらに後輩ではりょうは(北川綾巴)や江籠ちゃん(江籠裕奈)といった「天使たち」がヲタやメンバーの話題をかっさらっている。だけど、今のゆりあを見ていると、あの時、ボクが感じた真のアイドルの胎動、あの予感は間違っていなかったと思える。
「いつからゆりあはこんなに高く跳べるようになったのだろう」。それはもちろん、文字通りのジャンプ力の話じゃない。純粋にダンスの実力の話でもない。アイドル性とか表現力とか、それらをすべて引っくるめた本質的な輝き<光>の部分の話だ。
2.ダンサー×アイドル
もともとダンサーだったゆりあは、アイドルの踊りに合わせるのに苦労したという話を聞いたことがある。だけどいま、心境の変化と、おそらく(子兎道場の企画)「ロード・オブ・ザ・ダンス・アイドル」の影響もあるんだろう。かつてのダンサーゆりあがアイドルゆりあの中に戻りつつあるんじゃないだろうか。
それは単なるダンサー回帰を意味しない。むしろ、アイドルゆりあの中で、ダンサーの部分とアイドルの部分が高次元で融合し始めているような、むしろ、その両者が合わさって、ひとつ上の次元に到達していると言ったらいいのか、なにかそんな感じを受ける。カッコよさとカワイさがムリなく同居している。
(あまり大きな声では言えないんだけれど)今のゆりあだったら、正直、ボクは本店のセンターを任せてみても面白いとさえ思える時がある。SKEヲタでゆりあを知らない人は居ないし、48ヲタでもゆりあを知らない人はほとんど居ないだろう。それでも、一般的な知名度では、まだまだ超選抜には及ばない。だからこそ、度肝を抜くことが出来る。丸ゴリを驚かせた花道のようにね。
3.弱音
2/10、AKB劇場とSKE劇場で行われた生誕祭。「生誕祭で燃え尽きてヲタ卒とかしないで」とお願いしたAKBれいにゃん(藤江れいな)のファンに支えられている感と、「私の背中についてきてくれたらなと思います」という力強い言葉を放ったゆりあの引っ張る感は好対照だった(もちろん、どっちが正しいとかそういう話じゃない)。
3期生の同志、ゆっこ(木下有希子)と須田ちゃんから届いた手紙では、ふたりとも「弱音を吐かない」と書いていたし、同じく同期のみきてぃ(矢方美紀)も「諦めない、弱音を吐かない」とぐぐたすに書いている。たしかに、ゆりあは弱音を吐かなそうだし、それほど雄弁なタイプでもないんだろう。
だけど、元気いっぱいの笑顔を見せていたあの頃、しゃわこ(秦佐和子)の後ろで優しく微笑んでいたあの頃と同じように、いまのゆりあからも、「想い」はヒシヒシと伝わってくる。逆説的に言えば、(言葉以外で)その「想い」が伝わるからこそ、余計に「弱音を吐かない」と感じられるのかも知れない。その辺り、じつは意外なほどゆいはん(横山由依)に似ているのかも知れないとも思う。
ゆいはんの場合は、その表情や仕草がなによりも雄弁に(彼女の「想い」を)物語るわけだけれど、ゆりあの場合、それはダンスだ。色んなことがあるけれど、まるで、そうしたものを全て忘れるために踊っているかのように見えるあのダンス。あの時、あの時も、ゆりあは少しだけ寂しげな目をしていた。
ミュージカル『RENT』で描かれたニューヨークの若手芸術家たち。生きるってことそれ自体を削りながら芸術を作っているような、「生命の輝き」そのものがそこに宿っているような、なにかそんな鬼気迫る感じ。その片鱗をボクは、今のゆりあから、彼女のダンスから感じ取ることができる。
Seasons of Love(YouTube)
ゆりあは、充分素直です。
―大矢真那―
