『熱量』
戦略として考えてみましょう。「ファンの熱量」を「戦力」、「メンバー個人の能力」を「指揮官の能力」と見なします。ここで重要なのは、「ファンの熱量」は、「ファンの数/知名度」とイコールではないということです。そういう意味では、総選挙の票数と近い概念かも知れません。普通、タレントは知名度という観点から判断されますが、ファンの熱量という観点から考えると、また別の姿が見えてきます。
戦力=ファンの熱量を獲得してきた原動力は主に3つ考えられるでしょう。ひとつは「握手会」。またひとつは「公演」。そして最後に「冠番組」。これがなぜ「冠番組」でなければならないかという理由は単純で、冠番組でなければ濃度が薄まってしまうからです。濃度が薄いところで熱量は蓄えられません。したがって、もっとも濃度の濃いこの3つが「本体」を形成していると考えて良いでしょう。
(この「濃度」というのは、かなり曖昧な概念ですが、こうした場ではアイドル性が最大化されており、したがって濃いファンが多くなると考えて下さい。もともとライトなファンでも、こうした場があることで濃いファンへとスライドし、熱量を発するようになります。ファンが濃ければ濃い程、多くの熱量を発するというのは、なぜCD売り上げトップに躍り出ているかということを考えれば一目瞭然でしょう。その原動力は決して音楽番組やゴールデンの番組ではなかったのです。)
一方、「前線」は濃度が薄いところに形成されます。たとえば、ドラマやバラエティ番組のゲスト、あるいはグラビア。こうしたところに切り込んでいけるのは、いわば前線指揮官といったところです。そして、その中でも持っているファンの熱量が多いメンバーたち、言いかえれば総選挙上位の「超選抜たち」が主力を担っています。しかしながら、この熱量はもともと「本体」で獲得したものが核になっている筈でしょう。もちろん、前線で獲得した熱量もある筈ですが、基本的には本体で獲得した熱量(戦力)で前線に殴り込みをかけているわけです。
ただし、そこで自活し根拠地を築いていけるだけの能力を持っているかと言えば、そこはかなり微妙なところでしょう。それは卒業生たちのその後を見れば明らかだと思います。もちろん、グループに所属している限り、その熱量を利用できるわけですが、近ごろはその回路がうまく働いていないように思えます。
かつては防衛戦だったため、この問題は生じませんでした。握手会/公演/冠番組という「ホーム」で戦えていたため、戦いながら熱量を蓄えていくことが出来たのです。しかし、前線が拡大したことによって、いまでは補給がうまく行かなくなっています。前線指揮官たちはスケジュールが圧迫され、公演や冠番組にも出演がままならず、したがって熱量を(したがって補給路を)確保できません。
結局、握手会にかかる負荷が大きくなりすぎて体調を崩してしまう。なぜ、握手会がもっとも重要であるのかと言えば、それは(グループという観点からは売上の問題になりますが)、指揮官という観点からすると、握手会は自分に対して直接にファンの熱量を確保できるからです。つまり、もっとも効率が良い熱量の補給経路ということになります。しかし、反面これは「閉じた」補給経路でもあります。それはこれが個人に対する補給経路であり、また(基本的には)すでにその人に興味のある人が来る場だからです。
握手会と公演、冠番組は、それぞれ個人(握手会)、チーム(公演)、グループ(冠番組)に熱量を還元します。もちろん、個人の集合がグループである以上、個人に還元された熱量も最終的にはグループに還元される筈です。しかし、前線が拡大し、本体と切り離されてしまった状況では、前線指揮官たちが握手会や前線で個人的に獲得した熱量は、グループへと還元されていきません。公演や冠番組にすら出演がままならないため、そうした場が与えられていないのです。
その上、優秀な指揮官、個人の能力で熱量を獲得できる指揮官であればあるほど、敵陣深く(アウェイ)に切り込んでいけるため、かえって本体と切り離されていく傾向にあります。有名になればなるほど、メディアへの露出が増えれば増えるほど、かえって本体での仕事は少なくなるのです。これは皮肉です。こうした状況において、ぐぐたすはグループとの連合を維持するための重要なツールである筈ですが、自らの能力/勇を頼み、補給を顧みない(多くの)前線指揮官たちは重視しやしません。
しかしそうした勇猛な指揮官たちでさえ、前線に根拠地を築くだけの能力を持っている訳ではありません。ちゃんと訓練されてないからです。アウェイの地で彼女たちは、単に(すでに持っている)ファンの熱量で身を隠しているだけの無防備な少女と大差ありません。そして、根拠地を築くことが出来なければ、その地でファンの熱量を蓄えることもできないのです。前線指揮官たちは各地の前線で消耗戦を強いられています。こうして、本体でも前線でも、どこでも熱量を蓄えることが出来なくなっています。
今の状況では、グループに所属していることのメリットが、前線に切り込むための熱量を握手会で獲得できることくらいしかありません(だから握手会に過度に負荷がかかる)。本人たちの想いはどうであれ、前線指揮官たちにとっては、公演なんて大変なだけの無用の長物になってしまっているのです。公演で頑張っても、なにも将来に繋がらない。割に合わないってヤツです。これじゃあ、乃木坂と大して変わりやしません。実際、乃木坂は握手会と冠番組に最適化されています。もっと言ってしまえば、個人としての強さは乃木坂の方に分がありますから、もうどうしようもないわけです。
グループはすでに綻びはじめ、目先が利くものたちは離脱をはじめました。かつて防衛戦を行っていたころは、グループの利害と指揮官たちの利害は一致していました。しかしいま、その両者は結び付きやしません。本体を支えることが、必ずしも自分の将来/利益に結び付かないということが明らかになってきてしまったからです。好き勝手に前線を拡大する前線指揮官たちの方が待遇が良いのですから、それは当然のことでしょう。「私の夢はここにあります」と言っていた梅ちゃんでさえ、別の夢を語り出す状況なのです。
なぜ、指揮官たちが前線を拡大したがるか、それは単純です。ずっとグループに居られるわけではないからです。自分で土地を切り取るしかない。ボクはそのこと自体を批判する積もりはありません。人間は本来、自分勝手な存在です。それはアイドルとて例外ではありません。グループへの忠誠心とか愛とか、そうした抽象的な概念で縛って置けるものではないのです。指揮官たちの利益とグループの利益が結び付くようなインセンティブ(誘因)を見つけられない以上、それはシステムの責任です。
いまや指揮官それぞれが勝手に夢を語り、好き勝手な方向に前線を拡大し始めています。もはやグループとしての統制は効きません。もはやグループ全員が前線指揮官化し始めており、本体というものそれ自体が濃度を失ってきています。熱量を蓄えるべき本体が消滅し、すべてが前線となったら、これはどうやって戦い続けることが出来るでしょうか。グループ全体が熱量を(戦力を)消耗していくだけでしょう。いまや、グループ全体を巻き込んだ消耗戦になりつつあるのです。そして、それはもはや負け戦です。
こんなんで、いったいどうやって戦っていけるのか、それを教えて頂きたい。はっきり言って、このままではボクらが大切にしてきたシステムを守っていくことができない。 「ペナント・レース」というのは、公演に熱量を取り戻すためのアイデアである筈ですが、その効果はいまだ未知数です。結局、これも対症療法に過ぎず、根本治療にはなり得ないでしょう。
本来ならば、本体でしっかりと熱量を蓄えると同時に、それぞれの前線で自活し根拠地を築いていけるだけの訓練を行い、そうしてようやく前線に送り込むべきです(そうしてはじめて熱量を保ちながら戦うことが出来る)。あるいは、グループに所属していることで指揮官たちの将来が開けるような、そういう機能をグループが果たさなければならない。グループがちゃんとそういう機能を果たしているのならば、指揮官たちの利害とグループの利害は一致するでしょう。自分以外の誰か/何かのために戦うには、それなりのインセンティブが必要です。
「このままでは夢を見ることも語ることも出来ない」。しゃわこが絞り出すように言った言葉がボクの頭から離れたことはありません。ここに居ても「夢を見られる/語れる」ような、そして、ここに居ることが、ここで頑張ることが、夢への近道であり得るような、そんなグループであるということ、それが一ファンとしてのボクの夢です。