サカサマのパテマ | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


『サカサマのパテマ』

2013年日本、99分

監督:吉浦康裕

主演:藤井ゆきよ

概要
 『イヴの時間 劇場版』などのアニメーション作家、吉浦康裕が原作・脚本・監督を手掛け、好奇心旺盛な地下集落のお姫様・パテマの冒険をつづるヒロイン・アニメ。地下にある狭くて暗い世界を舞台に、防護服を着用しながら生活する環境にありながらも、前向きなヒロインと明るく暮らす人々が描かれる。気鋭のアニメーション作家が描く、緻密で幻想的な世界観に注目だ(Yahoo!映画より)

感想
 予告編を見て一目惚れした。「これはゼッタイ見たい…」というわけで、早速、見に行った(正直、新海さんに裏切られた気がしているボクは、2人目の新海さんを探しに行ったわけだ)。

 「素晴らしかった」とは言いづらいな…。アイデアは本当に秀逸。空を舞うことと空に落ちることを結びつけてしまった、不思議な浮遊感のある世界。現実と非現実を結び付けてしまうような幻想。どこか閉塞的な日常の中にある、空への憧れと同居する恐怖。ここには、文学、あるいは詩と言ってもいいような世界観がある。だけど、それを描き切れているか、と言えばそんなことはない。表現としては稚拙なところが見受けられる。

 まず映像面。細部の描きこみと実写を意識したような画面はそれなりに魅力がある。一方、CGとの調和、キャラクターの造形は微妙。ただ、それは致命的なものじゃない。

 より重大なものは、ときどき画面の上下を入れ替えて見せている「サカサマであること」において生じている。サカサマになって「空に落ちそう」という感じが出ていないんだ。なんか、普通に描いた絵をそのままひっくり返しているだけのように感じてしまう。これは、原画・背景の問題でもあると同時に、それ以前に脚本・絵コンテの段階で考えておくべき問題だと思う。もっとこう…高いところに居るときのゾワゾワっとした感じが出ていたら、この作品の完成度はグッと違っていたろうになと。とくに風が感じられない…。

 アイデアの秀逸さと技術の稚拙さという点では、新海さんの『ほしのこえ』に近いものがある。ただし、あちらは作画の稚拙さが際立っていたのに対し、こちらは演出面の稚拙さが目立つ。とくに、登場人物たちの感情の流れについていけない…というか感情の流れがスムーズに描かれていないというべきか…唐突な感じを受けるのがものすごくマイナス。勝手に盛り上がる音楽もあいまって、なんだかシラけてしまう。その辺がすっごくヘタ。

 それ以上に気になってしまうのは、アニメアニメしちゃってるところ(ヘタなのにアニメしちゃってるからなおさらだ)。色んなところから余計な文脈を拾い過ぎている。これだけのアイデアなんだから、文学、詩として押し切っちゃった方が良かったんじゃないか…(アニメーションを作るにしても、「アニメ」にしない道はあるんじゃないですか? ということ)。『ほしのこえ』が成功したのは、まさにあれが「アニメ」じゃなかったからだ。

 もちろん、押井さんの『天使のたまご』みたいにやり過ぎてしまっても、それはそれで問題なんだろうけれど、この原案だったら、(それ自体に娯楽性があるから)その心配はなかったように思う。こういうものすら「アニメ」にしてしまう。現在のアニメ業界に巣食うタチの悪い病だな…と思う。

 もちろん、こういう「作品」を作ろうとしたことは素直に評価したい。ボクが見に行きたくなった作品というだけでも、この作り手には感謝したいくらいだ。最終的に疑問が残るところもあるんだけど、設定を活かした筋立ても評価できる。見終わったあとの感触も心地よい。

 でも、こういう非現実的な話だからこそ、ちゃんと「地に足をつけた」(リアリティの感じられる)演出が必要なんだと思う。この監督には物語を作る才能がある。だからこそボクは「これじゃダメなんだ」と言いたい気持ちになった。

☆☆☆☆(4.0)