『ウルヴァリン:SAMURAI』
THE WOLVERINE
2013年アメリカ、125分
監督:ジェームズ・マンゴールド
主演:ヒュー・ジャックマン
概要
『X-メン』シリーズのメインキャラ、ウルヴァリンを主人公にした人気アクションの第2弾。超人的治癒能力と手の甲から飛び出す鋭利な爪を持つウルヴァリンが、日本で自身の運命を大きく左右する戦いに身を投じる。『X-メン』シリーズと前作に続き、『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを力演。メガホンを取るのは、『ナイト&デイ』などのジェームズ・マンゴールド。一大ロケを敢行して撮影された日本の風景をバックに展開する壮絶なバトル描写や、ハリウッドでも活躍している真田広之の共演にも注目。(Yahoo!映画より)
感想
やっぱりボクらがまず引っ掛かってしまうのは、「日本」という問題。なんか、ディスカバリーチャンネル辺りで紹介している日本観そのものって感じ。日本でロケを行ってるし、その現場スタッフには日本人が入ってるから、細部の描写でそこまで目に付く「ヘン」なところはない。
だけど、それ以前に、世界観という大きな枠組みのところで、これはまったく日本ではないという感じがする(個々のパーツは必ずしも間違ってないんだけど、その積み上げ方が全く間違っているって感じかな)。
それが典型的に表れているのは配役。「日本人」役では、本職の日本人俳優は真田広之さんだけ(真田さんの演技も微妙っちゃ微妙だけど)。ハル・ヤマノウチさんは流石に迫力の演技を見せているけれど、その2人以外の「日本人」メインキャストには違和感が強い。
まず、2人の日本人ヒロイン、モデルのTAOさんと福島リラさん。英語圏の人には気にならないかも知れんし、だからこそ監督のOKが出ているんだろうけれど、やっぱり演技の基礎が出来ていないから、日本語で会話する場面では(母国語であるため余計に)雑な演技になっている(まあ、TAOさんは美しいと思ったけれどね)。
それより何より気になってしまったのは、彼女たちの「モデルっぽさ」。海外で仕事をする場合、意図的に誇張されたオリエンタル風の自己プロデュースを行う場合がある。そうした(日本人から見れば滑稽でしかない)偽のイメージが、そのまま画面に表れてしまった感じがする。それは、「そういうもの」として受け取れば見れるんだろうけれど、「普通の日本人」として提示されてしまうと違和感を覚える。
「クールジャパン」を地で行くような福島リラさんの赤髪にしてもそうだ。そうした髪をする女の子は確かにいる。だけど、そういう髪の子は(日本の中でも)そういう文化に属しているだけで、そんじょそこらに転がってるもんじゃない。まして、それでお座敷に出て来られてもキョトンとしてしまうだけだ。この制作者は文化の階層/重層性ってものを理解していない。
もっとも滑稽なのはハラダ役の彼(ウィル・ユン・リー)。いや、日本語おかしいでしょ。もちろん、これまでボクが見てきた数々の映画にも、おかしな日本語は出てきた。でも、今作の場合、他の「日本人」たちが(時に雑とはいえ)一応、ちゃんとした日本語を使っているだけに、ものすごく浮き上がって見えてしまう。それは、作品世界そのものを脅かす。さては、おぬし…「原田」じゃないな…?(何度もツッコんだよ)
「ヘンな日本」ってのはハリウッドでは別に珍しいものじゃない。ただ、それでも見れてしまう映画はある。たとえば、『キル・ビル』なんかはその典型だ。あれはヘンだけど、ヘンなりに統一がとれている。そこにはタランティーノの美意識が見て取れるんだ。『ウルヴァリン』はそうじゃない。雑多な要素がそのままゴッタ煮にされていて、著しくバランスを欠いている。制作者の側に、そうしたものを統一させる美的感覚が欠如しているように感じる。
それが典型的に現れているのが「看板」。たとえば、格納庫の上にデカデカと飾られた『YASHIDA 矢志田産業』という文字看板。いや、インディーズ映画かよと…漢字を使いたいのは分かるけれど、押井守や庵野秀明だったら、もっとずっと洗練したやり方でそれを提示する。研究所の「13フロア」ってのもヘンだった…カタカナだの漢字だの、日本要素を入れようとして失敗した典型的な例(デザインになっていない)。
しかもそれが、『X-MEN』の世界観に取り込まれた結果として、ヘンになってしまったんだったらまだ救われるんだけど、それがそうでもない。たとえば「シルバーサムライ」。あんなの日本人からしたら、ちゃんちゃらおかしい(ってのは本田の「アシモ」のデザインを見れば分かるでしょう)。だけど、それ以前に、あれって『X-MEN』の世界観に噛み合ってないんじゃない? むしろ、『アイアンマン』でしょ、あれは。
そんな感じだから、日本要素を外したらまともに見れるかって言うと、そういうわけでもないんだ。この映画は単に、かなり質が低い。それがハッキリ表れているのは脚本。『X-MEN』の世界観になっていないし、その主題(マイノリティの苦悩)も描かれていない。もっと言えば、それ以前にプロットがダメすぎる。
敵味方入り乱れる構図が複雑すぎるし、個々の動機も分かり難い。緻密に練り上げられたサスペンスだったらそれでも良いかも知れないけれど、これだけテンポの早いアクション映画でそれをやってしまうと、観客の感情移入を削ぐ結果にしかならない。
クライマックスのオチも、「ああいう風なオチにしちゃダメでしょ…」って感じ。あれだと、それまでのことが全て台無しになってしまう。もちろん、台無しにするのが目的なんだろうけど、そこで意図されたような効果―哀しみ―をあげられていない。ただ、「あ~あ…そうしちゃったか…」って感じ。
一番、「しょーもない」って感じたのは(以下ネタバレ)ウルヴァリンの方が先にマリコと寝といて、その婚約者が遊んでいるところに乗り込んで、「フィアンセがいるのに何ちゃら」って説教するところ。あんなもん日米問わずアカンでしょ(笑)(ネタバレおわり)
VFXも地味だったし、大して金も掛かってなさそう(実際、前作『ウルヴァリン』は1億5千万ドル、『X-MEN FC』は1億6千万ドルなのに対して、本作は1億ドル)だし、脚本はアカンし、キャストもダメだし。日本がどうこう以前に単なる駄作だったなこりゃ…『X-MEN』ファンは、最後の最後のエピローグだけ見る価値がある。あとは長ったらしいオマケみたいなもん。
☆☆☆(3.0)