『物語論3』(SKE48編#1)
このシリーズでは、「ファンの士気」がAKB48選抜総選挙の鍵を握っており、そして、「物語」が、「ファンの士気」に大きな影響を与えている、ということをテーマとして描いています。
前回は、NMB48の「てっぺんとったんで!」という「物語」が、実際には「紅白を目指す」という「物語」であるということ。そして、それはファンが参加できない「物語」であるため、総選挙での得票には結び付かないだろうという話でした。
今回は、SKEの話をしたいと思います。ここでのキーワードは、「参加」です。
1. The Beginning
選挙投票前、SKE48 AKB48 第5回選抜総選挙 煽りV 『The Beginning』というものがYouTubeにアップされました(↓)。この動画は出色の出来なのですが、なにより印象的なのは、そのメッセージ性です。
この動画において、明らかに強いメッセージを持つ「物語」が2つあります。ひとつは「SKEヲ、死守セヨ。」というもの。もうひとつは「始めよう、天下取りの戦いを」というものです。のちに見るように、この2つはSKE(のファン)全体を駆り立てる「物語」として、とても有効であるように思えます。
大事なことは、これはファンが作った動画であり、ここに現れている「物語」は、(運営によって与えられたものではなく)自発的に出てきたものだということです。そして、この動画の「物語」がファンたちの心に響くのは、それがファンたちの間で無意識に共有されていた「物語」だからでしょう。
ボクはこの動画を見た時に、ファンたちが総選挙の背後に自動的に「物語」を読み込んで、それが現実の上にオーバーレイされているような印象を受けました。ここには、ファンたちの無意識の想いが顕在化されているように思えます。
それでは、これらの「物語」は、いったいどのようなものでしょうか。
2. SKEヲ、死守セヨ。
まず、「SKEヲ、死守セヨ。」という「物語」。ここで意識に昇ってくるのは、卒業メンバーの姿です。動画では、昨年の圏内メンバー15人から、しゃわこ、小木ちゃん、くーみん…二人三人と卒業していき、さらに茉夏の不出場で、15/15から14/15…13/15…12/15…11/15と数が減っていくのが映されます。
そこで、昨年は圏外だったメンバーたちの顔が映され、カウンターが逆に12、13…27と増えていきます。そして、「SKEヲ、死守セヨ。」という言葉が発せられるのです。これは非常にシンプルなあらすじの「物語」であり、そのメッセージははっきりしています。昨年は圏外だったメンバーを圏内に送り込んで、「SKEの勢力が減退するのを阻止しろ」ということですよね。
もっとも重要なことは、この「物語」にはファンが直接に「参加」できるということです。自分の一票が「SKEヲ、死守セヨ」という「物語」に結びつくのですから。
そしてまた、この「物語」は、今年初頭から卒業が相次ぎ、「SKEは終わった」と語られていたことを連想させます。
去年、速報圏内に入りながら、最終的に圏外だったゆっこの映像には、「SKEは、終わらない。木下有希子も、終わらない」というテロップが入っています。このテロップによって、件の「SKEは終わった」という「物語」が連想され、そして反転して、それに対するカウンターとして、「SKEヲ、死守セヨ=SKEを終わらせない」という「物語」が引き込まれるのです。
(そして、繰り返しますが、この「物語」にはファンが直接に参加できるのです)
もうひとつ、この「物語」は、投票前に作られたにも関わらず、速報後の動静を見据えているように見えます。知名度が高く、メディア露出も多いAKBのメンバーは、速報後にまくってくる可能性が高い。他グループは速報後には防戦一方になってしまうのです。とにかく速報でぶっ込む作戦だったSKE陣営にあっては、なおさらでしょう。
ですから、その意味でも「SKEヲ、死守セヨ」という「物語」は有効なのですね。とにかく、「守り切るしかない」と。SKEのファンが速報後に投じる一票は、この「物語」、すなわち、「SKEヲ死守セヨ=AKBメンバーの速報後のまくりからSKEメンバーを死守セヨ」にも乗ることが出来るのです。
3.始めよう、天下取りの戦いを
もうひとつは、「始めよう、天下取りの戦いを」という「物語」です。中堅以下のメンバー(のファン)には「SKEヲ、死守セヨ」という「大きな物語」が有効かも知れませんが、選抜を狙うようなメンバーの選挙は、そう簡単にはいきません。彼女たちの選挙戦はむしろ個人戦の傾向が強い。彼女たち(のファン)にとってランクインは当たり前で、むしろ順位の方が重要ですからね。
そこで出てくるのが、「始めよう、天下取りの戦いを」です。ここでは、「組閣」が、その「天下取りの戦い」を始めるためのスタートラインとして捉えられています。「SKEヲ、死守セヨ」が「守りの物語」だとすれば、こちらは「攻めの物語」です。卒業、組閣、兼任解除、一抹の悲しさと寂しさを感じながら、それでも前に進んでいかなければならない。これは、とても「強い物語」です。
そして、「天下取り」はひとりで出来るものではありません。全国をすべて制覇せねばならんのですから。この「天下取り」という文脈において、珠理奈と玲奈を筆頭に、昨年のUGちゅりや須田ちゃん、ゆりあや真那、あいりん、それから、終身名誉研究生のかおたん、キャプテンに任命されたにしし辺りは軍団長としての位置づけがなされることになります。
彼女たちは、SKEを率いて「天下取りの戦い」を始めなければならない。したがって、彼女たちのファンがこの「物語」に巻き込まれるということは、彼らの投票が、ただ個人戦のためではなく、「SKEの天下取り」のため、という「大きな物語」に接続されることを意味するのです。
端的に言えば、「推しのために」一票入れるという気持ちが、自然と「SKEのために」という気持ちを引き込む回路が、これらの「物語」によって用意されているということですね。言い換えれば、すべてのSKEメンバーのファンが、「SKEのために」という一点で繋がるための回路として、これらの「物語」があると言えるでしょう。
そして、グループの全てのファンが同じ方向を向くのならば、そこには宗教的熱狂とも言えるような強い力が生まれます。そして、それこそがまさに、「大きな物語」の効用なのです。
…
さて、今回はSKEというグループ全体を動かす「大きな物語」という側面から語ってきました。しかし、今回の選挙でもっとも大きな影響力を持っているのは、むしろ個人が抱える「小さな物語」です。
次回は、その話をしましょう。
今回の登場メンバー:しゃわこ(秦佐和子)、小木ちゃん(小木曽汐莉)、くーみん(矢神久美)、茉夏(向田茉夏)、ゆっこ(木下有希子)、珠理奈(松井珠理奈)、玲奈(松井玲奈)、須田ちゃん(須田亜香里)、ゆりあ(木崎ゆりあ)、あいりん(古川愛李)、真那(大矢真那)、かおたん(松村香織)、にしし(中西優香)