社会の揺籃期には、ものを書く人はすべて、かならず詩人である。言語そのものが詩であるからだ。そして詩人たることは、真と美、一言にしていえば善――まず存在と知覚とのあいだに、つぎに知覚と表現とのあいだに存続する関係のうちにある善――を感知することにある。その起源に近い原始的言語はすべて、本来、ある史詩のえがくがごとき混沌たるものである。おびただしい辞書作りや文法上の区別などは、のちの時代のなしたことで、詩作品のカタログであり形骸であるにすぎない。
「詩の弁護」森清訳
『世界の詩論』p.103