『ホビット 思いがけない冒険』
THE HOBBIT: AN UNEXPECTED JOURNEY
2012年アメリカ・ニュージーランド、170分
監督: ピーター・ジャクソン
主演: イアン・マッケラン
概要
『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のピーター・ジャクソン監督が、同シリーズの60年前を舞台にした小説「ホビットの冒険」の実写化に挑んだアドベンチャー大作。凶悪なドラゴンに占拠されたドワーフの王国を奪還する旅に出たホビット族の青年ビルボや魔法使いガンダルフの一行が、さまざまな戦いを経て強大な力を秘めた指輪と対峙(たいじ)する姿を壮大なスケールで映し出す。ガンダルフにふんするイアン・マッケランやイライジャ・ウッド、ケイト・ブランシェットら、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のキャストとキャラクターも再登場する。(Yahoo!映画より)
感想
あらゆる所に絵がある。あらゆる所に歌がある。詩は絵のように、絵は詩のように。ぼくは芸術なんて言葉は使いたくないけれど、いま、なにかをそう呼ぶとすれば、ぼくは、これをこそ芸術と呼ぼう。
これは、エピック(叙事詩)だ。いまや、ぼくらの種族は、エピックをこのように語ることが出来る。野蛮さと誇り、旅と故郷、勇気と情愛、幻想と暗闇。そして、何より歌がある。ほかに何が要る?ぼくらの血の中に脈々と受け継がれてきたもの。日本人のボクでも、それを感じることが出来る。それは、きっと、民族よりも古い記憶。種族の記憶。
太古、血で血を拭うような、生き残りのための闘争。その頃、ぼくらの種族は、はるかに残虐だった。そうした残虐性は、各地のエピックに色濃く残っている。そうした残虐性こそが、エピックの本質なんだ。この映画は、ソフィスティケート(洗練)された文明人には毒が強すぎるくらいに、とてつもなく野蛮な映画だ。そして、紛れもなくエピックそのものだ。
かつて、神話や伝説が語られる時に持っていた神秘性。まさに、その世界にいるということ。幻想の中の陶酔。かつて、神懸かった巫女たちが発していた言霊の力。吟遊詩人が謳っていた英雄たちは、その歌の中で、真に生きていた。科学の発達とともに、人類は神々を殺していった。世界のあらゆる片隅から、すべての神秘は消えていった。いまや、ぼくらは、こういう形で神々の物語を蘇らせる。
3時間になんなんとする上映時間。だけど、そんなことは全く問題にならない。映画のリズムというものを考えた場合に、中だるみするところはある。でも、そんなことは本質的なことじゃない。いつまでもその世界に浸っていられるような、物語が現実を覆ってしまうような、幻想と現実の境界が曖昧になるような、そんな終わらない物語を、長い長い物語を、ぼくらはいま、謳おう。
☆☆☆☆☆(5.0)
2D字幕版