この原作&映画ファンの方は、このレビューは見ない方が無難です<(__)>
『日輪の遺産』
2010年日本、134分
監督:佐々部清
主演:堺雅人
概要
太平洋戦争終結間近の夏、祖国の復興を願い、GHQ最高司令官マッカーサーの財宝を盗み出した帝国陸軍将校たちと20名の少女たちに待ち受ける壮絶なドラマを描くエンターテインメント巨編。ベストセラー作家・浅田次郎本人が映像化を熱望した原作を、主演に『武士の家計簿』の堺雅人、監督に『半落ち』の佐々部清を迎えて実写化。戦後60年以上を経た現在、自国の未来をいちずに思い憂いたかつての日本人のプライドに感動を禁じ得ない。(Yahoo!映画より)
感想
まあ、こういうのをボクが見たら、批判するに決まってるのですが…な~んか、見ちゃうんですよな~(^_^;)>…だけど、その実、これは割りと期待していたのです。大好きな堺さんに、ユースケさん。この監督(佐々部)さんの『ツレがうつになりまして』も割りと良かった。でも…ね(;一_一)
まず、設定がムチャクチャすぎるわな~。ツッコミどころが山ほどあるよね。そもそも、作家が、この時代のことを調べ切れとらんようで、出てくるエピソードも表層的なものに留まっている。まあ、所詮、人情派作家(つまり、本物の戦記作家ではない作家)の作だよねと。あの八月の感じがまったく出ていない。まるで別天地のよう。これはいったい、いつの時代だよと。大体、(これは演出の問題だけど)ラジオの玉音放送もクリア過ぎるでしょ。何時代だよと。
矛盾もゴマンとある。あの時期にあんなに自由に動き回れるってどうなってんだと。そもそも、極秘任務じゃないんかと。それに、直接、阿南陸相に(一日足らずで)会いに行けるんだったら、あの伝令みたいのは不要なんじゃないか?あの極秘指示みたいなやつだって、変な伝令を通さずに直接に渡した方が手間も省けるし、情報も秘匿できるでしょうに。なんでわざわざ(手間と情報漏れの確率を)増やす…。
それに、何よりストーリーの展開に(まったく!)必然性がない。というより、人物の性格設定が破綻してるんじゃないかい?ああいう設定で、ああいう言動を取るか?って場面が散見される。物語進行のために、人物設定が犠牲になるっていう典型的なパターン。この辺り、作家の技量にも疑問。
端から真実性のカケラもないような荒唐無稽な話なんだし、作家自体に時代を切り取る力が無いのだから、本来ならば、この映画は、エンターテイメントとして生きるしかなかったんだと思う。それを監督が理解していないところが痛すぎた。面白くなきゃ話にならんよ。『ツレが~』は良い映画だったし、監督自身に能力が無いとは思わんがね。この作品には向いてなかったってこと。時代の空気も出てないし。もう、とにかくテンポが悪いのが致命的。
それに輪をかけているのが、キャスティング。八千草さんの演技は、あれはあれでひとつの芸なんだけど、はっきり言って映画のテンポを完全に削いでいる。テンポを削ぐだけ削いで、ぼくらにあくびを引き起こさせる。しゃべらせないで置物みたいに置いておいた方がまだ良かったよ。
それから、堺さん。あの役に持ってくる意義が分からん。『ツレが~』もそうだけど、この監督さんの作は、堺さんに向いてない役ばかり、やらせてるような気がするね。彼には、もっと危ない感じの役をやらせないと勿体ないよ。真面目な役なんざ誰にでも出来るけど、ああいう危ない演技が出来るのは、彼しかいないからね。それに、ユーちゃんにインテリの役はできんよ。
それからそれから、「いま考えて作っている」作品だということに、作者も、読者も鑑賞者も、もっと意識的になる必要があるんだと思う。もちろん、現在の思想を盛り込むのは構わない。だけど、実像をゆがめてしまっては駄目だ。紛れ込まされたヒューマニズム。「きさまは…人間として生きよ」…わ~はっはっは(≧∀≦)ノ…うっすいうっすい。作品自体が謳い上げるならばともかく、紛れ込まされたヒューマニズムなど、何の心も打たん。どこの国の、どこの時代の話かと。それがすべてかな。ご都合主義かつ自己完結した浅薄な物語。
「あの時代を忘れてはいかん」…この映画を見て、そういう感想を抱くかも知れない。だけどそれが既に相当にゆがめられていることに気付けと(ボクは言いたい)。まあ、この映画も、その他の多くの「歴史物」と同様、ファンタジーとして見るのが吉かな。それが、いかにも時代を切り取った風を装うのが、ボクには気に食わんのだ。少なくともこれは、あの時代を真っ正面から見つめた映画などではない。ファンタジー。おとぎ話。それも大したファンタジーじゃない。
あの八月。多くの命が失われていった。多くの未来が奪われていった。こんな安っぽい感動のために、彼らは死んでいったんじゃない。
☆☆★(2.5)