『インディヴィジュアル・プロジェクション』
阿部和重
1999年
概要
渋谷・公園通り。風俗最先端の街に通う映写技師オヌマには、5年間にわたるスパイ私塾訓練生の過去があった。一人暮しをつづけるオヌマは、暴力沙汰にかかわるうち、圧縮爆破加工を施されたプルトニウムをめぐるトラブルに巻き込まれていく。ヤクザや旧同志との苛烈な心理戦。映画フィルムに仕掛けられた暗号。騙しあいと錯乱。ハードな文体。現代文学の臨界点を超えた長編小説。(Amazonより)
感想
あんまり記憶には残らない作品ですが、1人の人物(主人公)に焦点を合わせた作品としては、なかなか良い出来でした。阿部さんの場合、群像劇を描くのには優れていますが、誰か1人に焦点を合わせるのは苦手な印象がありました。主人公に対する作家の態度に距離感を感じる所があって、それが読者の作品に対する没入を妨げている感があったのです。今作が比較的良い出来なのは、主人公が映写技師ということで映画学校出身の阿部さんにとって思い入れしやすかったためかも知れません。また、近年の彼の作とは違い、この物語は収斂に向かうのではなくカオスへと向かうのですが、その辺りもなかなか尖っていて良かったですね。