
『グランド・フィナーレ』
阿部和重
2005年
概要
終わり、それとも始まり……神町を巡る物語。
「グランドフィナーレ」という名の終わりの始まり。
毎日出版文化賞、伊藤整賞W受賞作「シンセミア」に続く、
二人の少女と一人の男を巡る新たなる神町の物語。
第132回芥川賞受賞作。
感想
『シンセミア』『ニッポニアニッポン』『ピストルズ』と並び、神町サーガの一翼を担う作品です。『シンセミア』とは直接には繋がっていないのですが、『ピストルズ』には思い切り本作の後日談が書かれており、例のごとく、結末を分かった状態で読んでおりました(^_^;)>
とは言え、本作の結末は、あえて収斂させないような形になっているので、『ピストルズ』で描かれていたことは、あくまでも可能性の一つとして捉えた方が良いのかなと。むしろ、そうした無限の広がりこそが、この小説のエッセンスなのではないかと思います。
しかしながらですね…正直、この作品はヌルいです。『シンセミア』のような凄みはないし、『ピストルズ』のような知的興奮もありません。おためごかしのような時事ネタと、取ってつけたかのような「死」というテーマ。著者がずっと描き続けている「視点」という観点も抜け落ちていますし、枚数の問題もあるのか、何かエンジンが掛かる前に物語が終わってしまったような印象があります。本質的に阿部さんは、長編でこそ実力を発揮できる作家なのかも知れません。
↑の帯に「芥川賞受賞作 - 文学が、ようやく阿部和重に追いついた」とあるのですが、むしろ、阿部さんがそのレベルに合わせたような…言葉は悪いですが「取りに来た」って印象が強いです。そのせいか、刺激的ではなく、心に残ることもなく。阿部さんの作品中では良くない方の部類に入ると思いますね。