なでしこ2-1カナダ
親善試合のフランス戦(0-2で敗戦)に引き続き、なでしこは非常に悪い立ち上がりでした。カナダのプレッシャーに耐えきれず、DF陣(&GK)はボールを前線に放り込んでしまう。そして、カットされる。DFラインを押し上げてラインを整える時間を作れないので、DFラインの前には広大なスペースが生まれる。そこを相手に狙われ、危険なエリアへの侵入を許してしまう。クリアをしても日本の中盤にはスペースが生じているのでボールを拾われてしまう。中盤がボールを持っても相手DFラインの裏をつくような一発狙いのパスばかりで、あげく、(特に阪口と宮間は)ボールが足についておらず、パスミスを連発。結局、ゲームが落ち着かず、自分たちのリズムでサッカーをすることができない。非常に悪い時間が続きました。このような試合をしていては、はっきり言って優勝などは不可能でしょう。
局面を打開したのは、左サイドからの崩しでした。ペナルティエリア内での大野の素晴らしい動き出しに呼応して、澤がピンポイントパスを送ります。大野はこれを冷静にキープし、後ろから飛び出してきた川澄にお洒落なヒールパス、これを川澄がゴールに流し込んで先制。この辺りから、カナダの動きが変わります。前線からのプレッシャーを控え、ハーフウェイ辺りからボールを狩りにくる守備を見せ始めたのです。このことは、逆に日本のDF陣を落ち着かせる結果となり、日本は持ち前のパスワークを発揮し始めました。
これを牽引したのは左サイドバックの鮫島でした。なでしこで最も優れた技術を持つ選手であり、また、左サイドバックに配置されていることによって、比較的に相手のプレッシャーを受けないでプレーをすることができます。したがって、彼女のボールタッチ数が増えると、なでしこに良いリズムが生まれてくるのです。この時間帯から落ち着いてボールを回せるようになったなでしこは鮫島にボールを集め始め、鮫島が攻撃のスイッチを入れていきます。
なでしこの二点目はまさにそうして生まれたものでした。左サイドで二、三回組み立て直し、最後は鮫島のクロスが宮間に渡ってゴールイン。これは相手キーパー(&DF)の判断ミスに助けられたものだったので、ややラッキーなゴールでした。
後半に入っても日本の良いリズムは続きました。小気味の良いパスワークで相手を翻弄し、ゴール前に迫っていきます。しかし、決定力に欠ける日本は再三の決定機を決めれずに、したがってゲームそのものを決めることができませんでした。それがやがてpunishment(罰)を受けることに結び付きます。
後半に入っても、鮫島を起点としたゲームメイクは変わりませんでした。左サイドが活性化する一方、宮間を中心とした右サイドはまったく不活性でした。しかし、活性化した左サイドは、チャンスを生み出す一方、ピンチをも同時に招くことになるのです(それがサッカーという競技の面白いところです)。鮫島の裏をとられて上げられたクロスは近賀の鼻先で相手14番に渡り、ゴールに流し込まれます。一点差。
この後も危ない場面はあったのですが、なでしこは安藤を投入して前線からのチェイスを激しくするなどして応戦。(3人の交代枠を使い切ったあとの)9番の負傷退場によって、カナダが10人での戦いを余儀なくされた時点で、試合は事実上の終焉を迎えました。
まあ、何はともあれ勝ったわけですが、リズムが良い時と悪い時の差が激しすぎるのが気になりますね。悪い時は前線にポンポン蹴ってしまって、全然リズムを生むことができないのです。そういう状況で、ボランチが相手のプレッシャーに耐え切ることができない(=ボールを落ち着いてさばけない)のも気になります。
しかし、何より気になるのは右サイドに配置された宮間です。彼女は(ゴールこそしたものの)ひどすぎましたね。ボクが監督だったら前半で代えています。それくらい悪い内容でした。
従来、宮間が左、大野が右、川澄が(セカンド)トップというのがなでしこの基本布陣です。この試合、川澄も余り良くなかったのですが、大野は割りと機能していました。元々、大野はトップの選手なのでこれは当たり前かも知れません。したがって、大野と川澄の位置を入れ替えるという発想は、前からあったものでした。しかし、大野と川澄の位置が入れ替わることはあっても、宮間が右に固定されるというのは余り記憶にありません。もちろん、彼女は両足が蹴れるので、右サイドでもプレー可能でしょう。
とは言え、問題はそんなことではありません。左サイドが活性化する一方、宮間は右サイドで孤立していました。ボールに触れないので前半はちょこちょこ中に入ってきたのですが、相手の選手に自身が空けたスペースを衝かれるを恐れたためか、後半は右サイドに張り付いていました。スペースが空いたならば、そこを大野なり阪口なり澤なりが埋めれば良いので、それはそんなに問題にはならないでしょう。そうした連携は時間が解決する問題です。ボクが指摘したいのはもっと本質的なもの、組み合わせ自体に関する問題です。
宮間は元々、自分から突っかけるタイプの選手ではありません。「女遠藤」とか「女俊輔」とかいうアダ名は、何もFKのスペシャリストだからという理由だけでつけられているわけではないのです。本質的に彼女はパサーです。ボールに多く触ってこそ価値がある選手です。ボールを触らないパサーなんてピッチに居ないに等しい。しかし、先述したように、このチームで攻撃の起点になるのは左サイドバックの鮫島ですから、右サイドには余りボールが回っていきません。これが宮間が孤立した理由でした。(従来は宮間も左サイドでしたから多くボールに触れたわけです)
また、宮間はパサーですから、味方が援護してあげなければならない。すなわち、彼女の近く(視野内)にボールを受けられる選手が居る必要があるのです。一度、大野が右サイドに侵入したシーンがありましたが、宮間がチャンスを生み出したのはあれくらいだったでしょう。宮間がパスミスを連発したのも、サポートを得られない状況だったという要因もあるのだと思います。本来なら近賀がサポートしてあげなければならないのですし、実際に、近賀は(あまり成功しなかったものの)そうしようと奮闘していました。しかし、そこにこそ落とし穴があるのです。
宮間はパサーです。味方がサポートしてあげないといけない。宮間が右サイドにいる場合、必然的にその役割は右サイドバックの近賀が果たさなければなりません。もともと、近賀は超攻撃的なサイドバックなので、この役割には向いている筈です。しかし、ことチームのバランスを考えてみた場合、左サイドバックの鮫島の存在を抜きにしては考えることはできません。つまり、チームの起点になるのは鮫島であり、彼女は常にアグレッシブに仕掛けていくということです。それがチームのスタイルなのです。そして、これまで、近賀の方は攻めを自重して地味な守備的役割に徹していました。彼女がW杯制覇に貢献したのは、まさにそうした自制の賜物でした。ところが、宮間が右サイドに回ってきた場合、近賀は宮間をサポートするために攻め上がっていかなければならない。宮間を追い越してパスコースを作ってあげる必要があるのです。繰り返しになりますが、宮間は単独では仕掛けられないからです。(他方、川澄/大野は単独で仕掛けられる選手です。)
ところが、それは、両サイドバックが駆け上がるということを意味します。チームとしては左サイドバックの鮫島が高い位置を保てないとリズムが悪くなる。一方、宮間をサポートするためには右サイドバックの近賀が上がらなければならない。結果として両サイドバックが上がってしまうのならば、チームとしてのバランスが危険にさらされるのです。(まあ、宮間の位置を左に戻せば良いだけの話ですけどね)
それから、ベンチワークにも一言。結局、一枚しか切らなかったわけですが、これは切れなかったのでしょう。つまり、こういう状況で投入できる選手が居なかったということです。これは選手選考のミスです。やはり、上尾野辺は必要だったように思います。