詩的機能(池上嘉彦) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


 言語についての新しい認識として挙げておかなくてはならない第二のものは、言語の「美的機能」(あるいは[詩的機能])と呼ばれるものに対する注目である。この場合の「美的機能」というのは、言語の「実用的機能」、つまり、先ほどごく常識的な言語の捉え方として述べたような見方と対立する。後者では言語は「手段」として何か他の目的に役立つという限りで価値のあるものと見られがちなのに対し、「美的機能」では言語そのものがそれ自体の固有の価値を有するものとして捉えられる。「美的機能」(あるいは「詩的機能」)と呼ばれるのは、それが言語芸術的なことば遣い(つまり、広義の「詩」)に典型的に見られるということ、そして、美を追求する芸術は他の何かに役立つという実用的な発想とは対極的な位置を占めるということ(「芸術のための芸術」)などと結びつけて考えればよい。
 ところで、その場合、言語が有すると考えられる固有の価値とは何か。「実用的機能」では、言語はすでに決まっている一定の意味内容を運ぶ手段である。「美的機能」においては、言語そのものが新しい「意味作用」を生む。前者が既成の体制の中での操作を能率的に進めることに役立つという文字通り「実用的」な働きであるのに対し、後者は既成の体制の枠を超え、新しいものを生み出す創造的な働きである。
池上嘉彦『記号論への招待』P.18