24 to 4 | 想像上のLand's berry

想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りの上により多くの涙が流される
聖テレサ/トルーマン・カポーティ

『24 to 4』

 今年も桜が咲いている。あるいは、別の桜が咲いたのだろうか。4年前に咲いていた桜は何処へ行ったろう。あの記憶の中で、ぼくらはこれから過ごす時代に思いを馳せ、舞い散る桜を全身で浴びていた。まるで、そうすることがぼくらに与えられた特別な権利なのだとでも言うかのように。
 
 ぼくらは同じ場所に集い、そして、同じ場所で別れを告げた。平らかな滑らかさより、深みのある柔らかさを愛した。磁石に吸い付く砂鉄のように校舎に集い、手から零れるタンポポの綿のように散っていった。今、そこには、ほんの慰みばかりのチョークの粉と剥がれかけたシールだけが残っている。

 ぼくはひとり教室に佇み、灯りの消えかけた天井を見上げる。変わってないものが1つだけあるとすれば、あの古びた蛍光灯の情けないような明滅の感覚。気が抜けたソーダ水のような青空が、夕暮に向かう窓外の景色を奇妙に歪めさせる。静かなピアノの音が聞こえてきて、ぼくは、現実と幻想の狭間を彷徨う。

 街角で見る幻覚、失われた色彩。透明な空間。椅子の上のノスタルジア。かつて、この教室は、精霊たちが踊るドルイドの祭儀場だった。木々の間から零れる陽射しは、この大地を潤し、天上の川へと還っていった。その橋の上を運行する月は、ぼくらを、どこへでも望むところへ連れていった。

 銀河の船に乗った子どもたちは、いつかは星々の世界へ旅立たなければならない定め。ぼくらは、誰も、そんなことに気付きやしなかった。ただ、目の前には茫洋とした薄暗い海が広がっていた。そこでは、あらゆる小さな祈りは叶えられた。

叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りの上により多くの涙が流された。