seminar | 想像上のLand's berry

想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


 4年間そうしてきたように、ホームのいちばん端で列車を降りる。階段をのぼって改札を抜けると、街はいつもと変わらぬ退屈な表情でぼくを迎え入れた。前夜に降った雨が路面を濡らしていて、少しだけ高くなった太陽が、ところどころに出来た水たまりに光を反射させていた。

 4年生になって、知り合いに会うことも少なくなったキャンパスは、なぜだか奇妙にモノクロームで、まるで、どこか知らない場所のようですらあった。それでも、足はいつもと同じように体を運び、ぼくは、ガラス張りのドアを通り抜け、その無機質な建物に入る。

 仄暗い1階の廊下、遥か遠くの正面から射し込む光。7号館。左右にいくつか並ぶ扉のうち、ひとつの扉に手を掛ける。手の平に微かな冷たさを感じながら、少しだけ重たいその扉をそっと押して中に入る。窓の外の通用路が光を遮っていて、まだ昼前だというのに、部屋の中はまるで半地下のように暗い。白黒の世界の中で、長方形に切り取られた窓が、鈍く光を放っていた。

 10:25。部屋の灯りを点ける。微かに色彩を取り戻してゆくなかで、それでも変わらない静けさだけがやたらと自分を主張している。なぜだか少し眩しい。ロの字に並ぶ机、ロの字に開いた空間。部屋の中を微かに一瞥したのち、ぼくは、自分の席へと向かう。やたらと狭い椅子の背後を掻き分けるように進むと、向かって左手、手前から3番目にその席はある。机の上にリュックサックを放ると、妙に乾いた音が部屋の中に響いた。

 覆いかぶさっていく季節の中で、それでも、ぼくに分かっている数少ないことがあった。それは、この部屋が、この静かで陰気な部屋が、やがて彩りを帯びていくんだということ。人が居て、みんなが居て、そして先生が居て、そこは初めて「教室」になった。そこは、その時、紛れもなく、暖かな、ぼくらの教室だった。