『ルイス・スアレスを擁護する』
まず初めに、ボクは人種差別主義者ではないこと、
そして、いかなる人種差別も容認しないことを明言しておきます。
それについては、以下の2つの記事が証明してくれる筈です。
『Racism in football』
『悲しいこと』
また、ボクはプロフィールにも書いてあるように、
(当事者の一方、パトリス・エヴラが所属する)
マンチェスター・ユナイテッドのサポーターであり、
リバプールFC所属のルイス・スアレスを擁護するのは、
チームへの忠誠心ゆえではないことも明言しておきます。
さて、事の顛末は次のようなものでした。
2011年10月15日にアンフィールドで行われたマンチェスター・ユナイテッドFC戦において、スアレスが人種差別な言動を取ったとマンチェスターUのディフェンダーパトリス・エヴラから申し立てがあった。2011年12月10日にイングランドサッカー協会はエヴラの訴えを認め、8試合の出場停止と罰金4万ポンド(約480万円)の処分を科した。12月31日に独立委員会による115ページの報告書が公表された。それによると、試合中にスアレスから激しいタックルを受けたエヴラが理由を尋ねたところスアレスは「おまえが黒人だからだ」と答え、さらにエヴラが繰り返してくれと言うと「黒人とは喋りたくない」と答えた。このやり取りの中でスアレスは「negro」という単語を7回用いた。8試合出場停止が明けた後、2012年2月11日にオールド・トラッフォードで行われたマンチェスターU戦においては試合前の握手でエヴラを無視し、エヴラがスアレスの手を掴み再び騒動になりかけた。
(Wikipedia:ルイス・スアレス)
つまり、ざっと言うと、以下のようになります。
人種差別用語を連発し、出場停止処分を受けたスアレスが、
その出場停止期間が明けた直後の試合で、こともあろうに、
人種差別を受けた当事者であるエヴラが差し出した手を拒否した。
さて、ここまでの記述だけを読むのならば、
「スアレスって、なんて非道いヤツなんだ!」
という感想になる筈です。
実際、マンチェスターUのファーガソン監督は、握手拒否を受け、↓
「スアレスはリバプールの恥だ。リバプールは彼を二度とプレーさせるべきではない。」(スポーツナビ)
とまで言っていますし、また多くのサッカー・ファンも、
「スアレスひどい」ってことで反応が一致しています。
さらには、W杯での故意のハンドなどの経緯も含めて、
「スアレスは人間的にクズ」のような言葉もネット上で散見しました。
(このハンドの件に関しては、またいつか書きます)
あたかも彼は人種差別主義者で、犯罪者のような扱いになっています。
ですが・・・「少し待ってくれ」とボクは言いたいのです。
たしかに、握手を拒否したのは子どもじみた行為でした。
しかし、一方、エヴラが試合後に取った行動も、それは同じです。
(それは、スアレスへの当てつけのようなパフォーマンスでした。)
もちろん、だからと言って、人種差別が正当化されるとは思いません。
しかしながら、そもそも、ボクは、その疑惑自体に疑問があるのです。
まず、彼を裁いたのはFAであり、イギリスの司法当局ではない。
彼は、法律的な意味での「犯罪者」ではない。これは前提です。
結局のところ、当事者同士の証言&VTRでの読唇術を用いて、
FA(サッカー協会)は「有罪」という判定を下したのですが、
以下に載せたBBCの記事で述べられているように、それは、
それほど明確な証明に基づいた結論ではなかったのです。
Suarez was found guilty on the "balance of probability " - a lower standard than the criminal standard of "beyond all reasonable doubt ".スアレスの有罪判決は「蓋然性の比較(可能性のバランス)」という基準によって下された。それは、法廷における刑事犯の有罪判決基準である「あらゆる合理的な疑いの彼方に(もはや合理的な疑いを持つことはできない程であるという証明の程度)」よりも、低い基準だった。
http://www.bbc.co.uk/sport/0/football/16375963(訳:flowinvain)
つまりね・・・
「確たる証拠はないんだけど、人種差別である可能性が高いから有罪」
みたいな判決になっているんです。言い換えれば、「疑わしきは"罰する"」
スアレスは、自身がウルグアイ出身であり、「negro」という言葉を
人種差別的なニュアンスでは使っていないという主張をしています。
つまり、それは普通の呼びかけとして使っていたんだと。
(ぼくらも、人種差別的な意味はなく「黒人」って言いますしね。)↓
However, in Spanish-speaking countries such as Argentina, Chile, and Uruguay where there are few people of African origin and appearance, negro (negra for females) is commonly used to refer to partners, close friends or people in general independent of skin color.しかしながら、アルゼンチンやチリ、そしてウルグアイなど、アフリカに祖先をもつ人々が少ない一部のスペイン語圏の国々では、肌の色に関係なく、パートナーや親しい友人、一般的な人を指す言葉としてネグロ(女性の場合はネグラ)が一般的に使われています
(Wikipedia:negro-訳:flowinvain)
実際、報告書では、かなり明確に次のようなことが述べられています。
"This case is not about whether Mr Suarez is in fact a racist . Indeed , the commission will no doubt conclude that there are some indications that he is not . "この訴訟は、スアレス氏が実際に人種差別主義者かどうかについての訴訟ではない。事実はそれどころか、彼が人種差別主義者ではないという幾つかのしるしがあるということを、委員会は疑いの余地もなく結論づけるだろう。
http://www.bbc.co.uk/sport/0/football/16375963(訳:flowinvain)
調査委員会の報告書が、ここまで言い切っているにも関わらず、
スアレスは件の「疑わしきは罰する」という基準に基づき、
8試合の出場停止&罰金480万円という重い処分を受けました。
ボクは、エヴラがことを荒立てたかったのだとは言いません。
これは、不幸な誤解が生んだことだったと思えるのです。
しかし、そのような基準で罰せられたスアレス当人の立場を考えると、
悪意もない(かも知れない)のに2か月もの出場停止処分を受けた上に、
人種差別主義者というレッテルを貼られ、非難の雨に曝されたならば、
その告発をした当人から握手を差し出され、それを拒否したとしても、
人間の反応としては理解できるなってのがボクの正直な気持ちです。
もちろん、それが良かった/正しかったとは思いませんが。
それに対し、ボクはマンチェスターユナイテッドのサポーターとして、
「リバプールは彼を二度とプレーさせるべきではない。」という
サー・アレックス・ファーガソン監督の発言には断固抗議します。
彼はすでに、充分、罰を受けています。
これ以上、何かが必要であるとは思えない。
そもそも、人種差別主義がなぜイケナイかと言えば、
人種というラベルを人に貼り、それ"のみ"で人を判断してしまうからです。
一方で、曖昧な疑惑に基づき「人種差別主義者」というラベルを貼り、
そして、そのラベル"のみ"で人を判断してしまうのならば、
その人がやっていることは、人種差別主義者と同じではないのか。
そのように結論付け、このコラムを終えたいと思います。
2012/2/13 flowinvain記