
『大雨』
富士川の流量があがって、
東田子の浦で立ち往生。
やがて雨は止み、電車は動き始めた。
『富士宮』
また此処へきた。
これという目的があるわけじゃない。
前に来たのは二年前。
土地を離れたのは二十数年前。
祖父母が亡くなったのは十数年前。
もう知り合いも誰もいない。
ふらふらと適当な路地を選んで歩く。
ここは何故かとても気持ちが落ち着く。
なにかに守られているような気分になる。
そう言えば、雲に遮られて山が見えない。
それでも、不思議と気にはならない。
それはきっと、そこにあると分かっているから。

普段、ボクは肩肘を張っているんだなと思う。
何を、そんなに恐れているんだろう。
それは、たぶん、「メッキが剥がれること」
積み重ねてきたものが何もない。
卒論だって失敗するかも知れない。
また雨が降り始めた。
止まない雨だって時にはある。
『杉田』
ぼくにとって、もっとも大切な場所。
いつか、いちばん大切な人が出来たら、
その人を連れて来たいと思っていた場所。
結局、今年も一人で来た。
ここにくるたび、いつも何かしら道を間違える。
坂を上り下りしているうちに、やがて見つかる。

ゴルフクラブの前のゴミ捨て場。
ここが、僕の目的地。
いつか、弟とふたり、家を建てようって約束した場所。
この世界で一番、眺めのいいところ。
あの子は、小さいころ、ここに数回来た。
家の中に居るもんだとばかり思っていたら、
いきなり何処からか庭に現れて驚かされたこともあった。
「何処に行ってたの?」
あの時、あの子は何処を散歩してたんだろう。
たまにそういうことをして、ぼくらを驚かした。
あれは、野尻湖でのことだった。
キャンプ場で居なくなって大騒ぎ。
いつの間にかテントに戻っていた。
すぐ脱走するくせに不思議と迷子にはならなかった。
そう、あの子の面影ばかりを追い求めている。
今じゃ、ボクが迷子みたいだね。
「失敗したって良いじゃないか」

きっと、ボクがここへ来るのは、
リセットボタンを確認するためなんだ。