
風の強い日、海岸に着くと立っていられない。
それはもはや、風と呼べるような生易しいものではなくて、
顔に吹き付ける砂が、チリチリと痛い。
不思議と透き通った空気のなかで、海は白く泡立つ。
僕は砂で霞んだ音の濁流に呑みこまれて、
記憶も感情も何処かへと吹き飛ばされていった。
言いたい言葉はたくさんあったけれど、
きっと、全ての言葉は風に呑まれていった。
翼のない心で、手足のない言葉で、
どんなに大声で叫んでも、名前を呼び続けても、
全ての言葉は風と共に何処かへと消えていった。
空を見上げるなんて思いもよらなくて、
病人のようにふらつく足で、ただ写真を撮り続けた。
