12日(日)、お昼前後から雨が降り出すという予報なもので、図書館で取り寄せた

ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』なる短編集を読むことにした。

先日Hさんから紹介戴いたものが早速手元に届いたのだ。

僅か20頁の短編で、蝶や蛾のコレクションにまつわる内容なんだが、訳者の岡田朝雄自身が蝶・蛾をメインとした昆虫の専門家らしく、“注釈”が面白いのだ。

そして、この短篇の中に出てくるチョウやガの写真も掲げられておるから、ちょっと異色な翻訳と言える。

 

文章を長々引用するのも躊躇われるので、誠に雑な書き方になるけど、

==私の客は書斎で私のそばに腰かけていた。彼は私の蛾や蝶のコレクションを見たいと言ったので、私は書斎を出てボール箱を二・三箱とってきた==

【訳注】ドイツ語のSchmetterlingおよびFalterという言葉は、蝶と蛾の総称「鱗翅類」という意味である。したがって、蝶を指してる場合は蝶、蛾を指してる場合は蛾、両者を含んでいる場合は蝶や蛾などと訳し分ける必要がある・・云々

 

==「これはワモンキシタバ、学名はフルミネア。この辺りでは珍品だよ」と私は言った。==

【訳注】ワモンキシタバは、ヨーロッパからユーラシア大陸を経て日本にまで分布するカトラガ(キシタバ)属の一種。カトラガ属の蛾は、前翅が木の幹か岩肌とみまがうような保護色・・云々==

 

==輝く色彩の斑紋のひとつひとつ、水晶のような翅脈のひと筋ひと筋、触覚のこまかいとび色の毛の一本一本が見えてくると==

【訳注】触覚に毛が生えているのは、蛾の特徴である。したがってこの段階でのSchmetterlingは「蝶や蛾」と訳すのが適当。

 

と、こんな具合に8つの訳注が入っており、ヘッセの勘違いじゃないかというのもあって面白いではないか。因みにこの“少年の日の思い出”は、戦後の「中学国語」に長く掲載されたらしいのだが、一向に記憶に無い。

もひとつ驚いたのはカバーに描かれた蛾(ヤママユの仲間2種だとか)で、なんと中学生の作品だという!

 

ヘッセの代表作とされる『車輪の下』と同じ時期を描いたと思える「美しきかな青春」、ここにも思春期特有の期待や絶望に追憶が丁寧に記されており、いやいや自分の中学・高校時代を懐かしく思い出させてくれた。

 

今日はハチジョウネジバナ(ラン科)を探し歩く予定にしてるけど、まだ雨が残っておる。9時半までに止んでくれたら有難いんだが・・