私がまだ30歳代に入ったばかりの頃だと思うが、職場の読書家とされる何人かと居酒屋で大いに飲んでおったその中で、坂口安吾が話題にのぼった。 もちろん彼の作品など読んだことも無いから、ならばと彼の代表作『白痴』を買って読んだけれど、何が何だかさっぱり分らぬまま40年が過ぎてしまった。

図書館に予約入れてる本がまだ届かないもので、書店の文庫本棚を眺めつつ行きつ戻りつしてたらその『白痴』が目に留まり、ついつい買ってしまって1週間ほどになる。
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7つの短編が入っており、時間を身繕いつつ読み進めてた。 先ずは最初の「いずこへ」を読んだけれどさっぱり解らない。 仕方無く2つ目は「白痴」に集中すれど、これまた40年前同様全然要領を得ないのだ。
折角買ったからにはと気を取り直して「戦争と一人の女」 「青鬼の褌を洗う女」と4編読んだところでギブアップ、もう時間の無駄と判定下す。

昭和の中期から後期にかけ、新文学の旗手として注目浴びた作家で、いずれの作品にも“戦争”が色濃く反映されておるのだが、all or nothing ・・ 自分は決してallになれない、ならばnothingで貫こうとするんだから、私なんかの生き方からすると実に退廃的であり虚無的であり無頼であり空疎でさえある。
福田恆存の“あとがき”も難解、観念小説というヤツは私の手に負えない。

PCでHAKUTIと打っても白痴が出て来ない、死語になるんだろうなモッタイナイけど―― 文筆家が筆を折る気持ちも一定理解できる。 どんな表現すれば正当に的確に状態を読者に示すことが出来るのか、と問いたくなる最近の風潮は言葉狩りですらある。

白痴にギブアップし、DVDで『人間失格』を観る。
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太宰治は1948年にこれを書き上げ、その1ヶ月後に自殺してるから遺作とも呼べるこの小説は、自身の生い立ちから自死へいたる経過がかなり明確に描かれてた記憶がある。 映画ではさまざまな脚色がなされてるが、主人公大庭葉蔵を演じるのは至難であろう、この俳優さんは適役じゃなかったかな・・
中原中也が登場し、「前途茫洋よ」との言葉が発せられる。 芸術家には先が見通せない不安神経が張り巡らされておるんだろう。

それにしても太宰ファンは女性が圧倒的に多いらしい。
心中未遂に自殺未遂を繰り返し、酒とクスリと女に溺れ精神病院へ送り込まれた太宰なのに、一体何処に女性を引き付ける魅力が潜んでるのか、そこが知りたい。
ひょっとして、母性本能をくすぐる弱さ・脆さが受けるのかな?

これほどぐずつく秋も珍しいのじゃなかろうか、7月8月に引き続き予定の消化が難しい感じでハラハラさせられる。