高橋 治と言えば先ず『風の盆恋歌』が思い浮かぶ。
彼は東京大学文学部の出身で、当初は映画監督を目指してたらしいが後に小説作家転向、『秘伝』で直木賞を受賞している。
この秘伝もなかなかの出来具合(も一度読んでみたい数少ない本)だが、何と言っても彼は恋愛小説の名手だと思ってて、「風の盆恋歌」なんて読むと、是非是非「越中八尾の風の盆」見物に行きたくなったしまうのだ。

その高橋治の本『雪』が図書館の書架で見つかり借り出した。
単行本100頁ばかりの短編で、3時間も集中したら読み終える恋愛小説、何かの合い間にホイと挟み込めるから重宝だ。

一時凄い勢いで読まれた20世紀のベストセラー「マディソン郡の橋」を思い出させるが、不倫ものじゃない。
主人公浜中結花は航空会社のアテンダントで、アムステルダム行きの便に乗務し、
現地での待機2日間を利用してパリで暮らす恋人の画家と会う約束になっていた。
ところが東京は前夜から降り続いた雪により、交通機関が寸断され、出勤時刻に間に合いそうにない。
懸命な努力で空港には着いたが、こんどは飛行機そのものが中々飛べない。
飛行機が遅れればパリ行の飛行機に間に合わず、パリで過ごせる時間も短縮されるからとにかく焦る。
そんな状況に加え機長などクルーや客室乗務員の精神状態、更に組合との職務協定も絡んで緊迫感ある物語になる。
その辺りはさすが高橋 治と思わせるものの、結末がいささか“尻切れトンボ”だったかな、そんな感じ。