飯嶋和一の長編歴史小説『雷電本紀』を読み終えた。
私が知る範囲において、この作家の歴史考証はしつこく感じる程細かいから、その分どうしても長編にならざるを得ない、そんな感じの本ばかりだ。

相撲取り雷電が活躍したのは1700年代の後半、天明・寛政の時代だから、徳川幕府が倒れる80~90年ほど前ということになろうか。
題名の通りもちろん、雷電が如何に強い関取であったが詳しく描かれており、晩年に入りつつあったが谷風や小野川など歴史に残ってるお相撲さんも登場する。
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さて天明の時代といえば、江戸時代における3大飢饉のひとつ「天明の飢饉」が良く知られる。天候不順による凶作に洪水・浅間山の大噴火が重なって、90万人に及ぶ餓死者・病死者(食料不足による体力の衰えで、単なる風邪ででもどんどん死亡しておった)が出ていて、農民の疲弊は凄まじい状況下にあった。
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当時の相撲は、関取を抱える大名や藩の役人が関与する「拵え相撲」に堕落してたらしいが、そんな所へ現れた雷電為右衛門、有無を言わせぬ荒っぽい相撲でぶつかってきたから、谷風達だって俄然真剣にならざるを得ない。

雷電は生涯に10敗しかしたことのない伝説の相撲人ではあったが、彼がねじ伏せようとしたのは、実は谷風でなければ小野川でもなく、農民などから悪辣な搾取を繰り返す権力であった。

もちろん雷電は農民の出とあり、その強さは江戸市中の大部分を占める貧乏にあえぐ農民から神のように崇められ、時代の変革を求めつつもなすすべ無い民衆の怒りのもって行き場であったのだ。
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小説の終盤で語られる「釣鐘事件」のように、疲弊し切った社会情勢にも拘わらず、相も変わらず権力の座をうかがう武士階級と、それと結託する悪徳商人・・ ここでも
「お主も悪よなぁ」ばかりが蠢いておったのだ。

幕藩体制は以降も続き、約50年後の「大塩平八郎の乱」へと時代は流れる。

谷風にしろ小野川・雷電なんて、四股名の跡継ぎが現われてもおかしくないのに、何故かその名が出てこない。プロ野球でいわれる永久欠番に指定されてるんだろうか??

因みに「横綱」というのは、この谷風や小野川が、神社の注連縄を腰に巻いて土俵入りしたのが起源とされているが、当時はまだ正式な地位ではなかったらしく、明治中期に初めて制度上の横綱が誕生したようだ。
いずれにしろ江戸時代のは不明な点が多く、制度上を別とすれば実質的な初代横綱は谷風で、双葉山は35代になるという。
雷電は小藩のお抱え、横綱でなく大関で生涯を終えている。


天気図に秋雨前線が・・・
あれやこれや入ってるのに、変更が出てきたらオオゴト、今一番の関心事がそれ。