連日の35℃で外出が危険(いや、高齢者は室内におっても同じらしい)に思え、このところ本が手放せない。
午前中は自宅、午後は図書館や喫茶店など涼しい場所へ避難がてら読むから、手元のをどんどん消化してしまう。

ここ2日間ばかりかけて読んだのは、以前Yさんから紹介された『怒り』の上・下。
読み終えての感想は、“ミステリーの形をとった文学”で、最近読んだ同じく吉田修一の『悪人』よりずっと読み応えある作品だ。
『悪人』が2つの文学賞なのに、なんでこの『怒り』が無冠なのかと選考委員さんたちに聞いてみたく、はは~ん、出版社で持ち回りなんか?と勘繰りたくもなる。
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夫婦が惨殺され、犯人も特定されてるが整形手術受けて逃走中。
そんな中、読者に疑いを抱かせるような、前歴不明の男3人が姿を現す。
千葉県の外房にある漁師町にA、東京都心にB、沖縄波照間にCで、いずれも前歴にこそ触れたがらない流れ者らしいが特に問題無く、或いは真面目に日々を送っている。

ここまでならば単なる推理小説なんだが、この作品のテーマは犯人探しではない。
Aを信じようとする娘とその父親、そして娘が信じきれない父親。
ゲイ男を信じてるBにBとゲイ男の母親の交流、Cを信じようとする高校生の男女に加え、犯人を追う刑事とその彼女・・・
とにかく「信じる難しさ」を幾重にも幾重にも重ねる手法だ。

信じようとしても僅かに信じられない部分にとらわれて後悔する人間、信じ切った人に裏切られた時の絶望感、そんな人間の本質部分が鋭く描かれている。

ただ、「怒り」という題名、これが分らない。
犯人が殺人現場に残した、或いは廃墟の壁に残した「怒」という文字、ここんとこがミステリである。

9月中旬に映画化される。
一番難しい役どころはBとゲイ男かな? 
Bとゲイ男の母親、どこまで話し合えてたのかな? 
待つ楽しみが増えた。