木内 昇という直木賞作家を初めて知った。
図書館には幾つかの作品が収蔵されているが、借り出したのは名前に釣られて「茗荷谷の猫」。
中身は9つの短編で構成されていて、読み進んでいる内にこの9つの物語は、江戸時代から順を追って昭和の時代にまで流れることに気付く。また、登場する人物も妙な具合に交錯しているから、物語の内容以上に想像をかき立てる意図のあることが分かる。少し内容に触れてみると・・
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『染井の桜』
盆栽に熱をあげる武士、とうとうその身分を捨てて江戸は染井の植木職人になる。
特に桜の品種改良に力を注ぎ、遂に葉が出る前に一斉にピンクの花を咲かせる木を創り出した。これが今に伝わるソメイヨシノという品種で。。
 
『黒焼道話』
赤蛙に鶏の鶏冠、果ては百足の黒焼きまで。人の心を楽しくさせ、平穏な方向へと導く効能を探し続ける春道は、遂に御坊様へと。。
 
『茗荷谷の猫』
絵描きさんも、時代の流れに添うよう絵筆を持ち替えねばならないのか・・
 
コミカルで一番面白かったのが『隠れる』で、生活には困らぬだけの遺産を得た耕吉は働きもせず、人からの干渉も受けない生活を夢見て東京の街へ潜り込むのだが・・
 
もひとつ。いつかは映画の監督をしてみたいと夢見つつ、映画館で雑用をこなす『庄助さん』の元に赤紙がきた・・
 
どの作品からも哀しみが滲み出ていて、それはいいのだが何故か、何処か???
やっと分かった、木内 昇はなんと女性作家だった。キウチ ノボリと読む。
そうと分かればこの本の装丁だって女性好み、恐らく染井吉野の花の色をイメージしたものだろう。