山口 瞳と言えば洋酒の寿屋であり、柳原良平とのコンビで売れに売れたトリスだろう。
もう半世紀近くも前になるが、「江分利満氏の優雅な生活」では、高度経済成長期を控えた時代の世相を鮮やかに切り取って直木賞を得ている。
一方3年ほど前に読んだ「血族」では、そこまで書かなくてもいいだろうといった、作家の宿命みたいなものを感じた覚えがある。
今回の「酒呑みの自己弁護」はつい最近、ちくま文庫から再出版されたもので、110編のエッセーから成り、その一つひとつに山藤章二のイラストが挿入されているから一層面白い。

全編お酒に係わるエッセーだけれど、山口 瞳が交わった沢山の文士と呼ばれる人々、そして彼らの酒にまつわる失敗が活写されているから痛快だ。
彼は言いたい、「酒をやめるのは人生の大きな部分をやめてしまうのと同義」。
これぞ自己弁護であり狂気である。