心理士先生のカウンセリングの日。
いつも前もって何を話すか考えておく。
今回は迷った。
また、妄想や幻覚だと誤解されて傷付きたくない。
辛かったことや、不安だったこと、怖かったことを、少しずつ口に出せるようになってきている。
『話せるなら話した方が良い』
精神科の先生も言ってくれてた。
フラッシュバックの1つ、入院中の食事のことを話してみることにした。
手術で腸の穴を塞いで、人工肛門を造設した。
恐怖とショックで、食事を摂らなくなった。
先生や看護師からぶつけられる『なんで?』が辛かった。
『私の伝え方が悪かったのかもしれません』
前置きをした。
栄養士に何か食べられそうなものはないか、と聞かれた。
『食パン、具なしの茶碗蒸し、温泉たまごとか
もしかしたら、食べられるかもしれません』
その日から退院直前まで、毎日毎日同じ食事だった。
『時々お腹は空くのに、食事が運ばれてきたら食べたくなくなりました。
殺されちゃうんじゃないかって、その時は本気で思っていました』
『手術がうまくいかなかったことよりも、その後の入院生活が辛かったです。
今でも鮮明に繰り返し思い出します』
心理士先生と話をするようになる前に起きたことだ。
担当医にカウンセリングをすすめられたのに、拒んだのは私。
もっと早く話していたら、心が壊れることはなかっただろうか。
いや、そんなこともないだろう。
『色々な患者さんがいらっしゃいますから、栄養士も良かれと思ったんでしょうね。
そうだとしても、ずっと同じメニューを出し続けるのは良くないですね。
途中経過を確認すべきでしたよね』
心理士先生、今回は信じてくれたみたい。
共感してもらえて安心した。
いつまで経っても、嫌な記憶から解放されない。
でも、きっと少しずつ前に進んでいる。
『話してくださって、ありがとうございます。
どんなことでも心配せずに話してくださいね』
今更だったかな。
本当に話してよかったのかな。
帰り道、いつも通り悩んだ。
解決を望んで話したわけではない。
『こんなことが起きて辛かったです』
ただ聞いてもらえただけで満足だった。
愚痴って心が少し軽くなったから、良しとしよう。

