その日は、穏やかに過ごせていた。
夕食後、そろそろシャワーでも浴びようかと思っていたら、前日の担当看護師が勢いよく部屋に入ってきた。
この日は担当ではなかったのだが。
『ストーマのパウチを貼る前に、確認するから、看護師を呼んでって言いましたよね?』
そんなこと言われていなかった。
すごい剣幕。
圧倒されて、聞いていない、と答えることができなかった。
看護師『私、先輩に頼んでいたんですけど。
何で1人でやったんですか?
看護師が確認するって言いましたよね?
困るんですけど』
私『すみません。
1人で交換すると勘違いしていました。
すみませんでした』
謝ることが精一杯だった。
看護師『先輩に迷惑かけたじゃないですか。
何で言った通りにしてくれないんですか?』
しつこく食い下がってきた。
何でこんなに責められるのか。
早く交換したかったが、看護師の許可が出ず、待たされていた。
最終的には、自分でやるのだから、好きなタイミングでどうぞ、と。
看護師が確認するなんて、一言も言っていなかった。
理不尽だ。
入院生活で、我慢に我慢を重ねてきたことが、一気に頭の中で溢れた。
動悸が始まった。
看護師は苛立ちを隠そうともせず、激しく部屋を出ていった。
病院への不信感や不満が抑えきれず、涙が止まらなかった。
失望した。
気が付いたら窓を開けていた。
10cmくらいしか開かない。
頭が入らない。
どうして開かないのか。
地上から約20m。
もう楽になりたい。
部屋を飛び出した。
廊下や共有スペースの色んな窓を開けたが、どこも10cm弱しか開かない。
もし開いていたら、衝動的に飛んだかもしれない。
死ぬことでしか、意思表示ができないと思った。
少しは反省してほしい。
まるで檻の中。
窓から飛ぶこともできない。
外に出ることもできない。
病院の出入り口、夜は1つだけ。
守衛がいて、通れない。
屋上も施錠されている。
どこにも行けない。
楽になることも許されない。
パニックだった。
動悸は止まらない。
息苦しくて、廊下のベンチに座った。
看護師に何も言い返せない自分が情けない。
悔しかった。
何でこんな目に遭うのか。
私のせいだ。
どうせ私が悪いんだ。
どのくらいの時間、冷えた廊下のベンチに座ったままだったのだろう。
手足は冷え切っていた。
またあの看護師が来るかもしれない。
部屋には戻りたくなかった。