いよいよ抜糸。

2日に分けて行われる。

1日目は主治医の田部先生、2日目は研修医の山中先生。

半分ずつ。


研修医の山中先生は初めての抜糸。


1日目、田部先生がお手本。

山中先生に説明をしながら、糸をグッと引っ張られた。

思ったより痛かった。


田部先生『ちょっと痛かったですね。

頑張りましたね』

私『大丈夫です。

ありがとうございました』

田部先生『明日は山中先生が抜糸しますね。

僕もついていますので、大丈夫ですよ』

山中先生『よろしくお願いします』


2日目、山中先生の抜糸。

いつも明るい山中先生が、別人のようだった。

緊張感がすごすぎて、私も緊張した。

ニコニコしているつもりだったが、できていたか自信がない。


始まった。

少し山中先生の手が震えているような気がした。

なかなか糸が、ピンセットで掴めない。


やっと掴めた。

私『いたっ』

痛がらないつもりだったが、勢いよく引っ張られて、ついつい声が出た。

田部先生『違う。

何やってるの。

藤井さん、ごめんね』

私『いいえ、すみません。

大丈夫ですよ』


再チャレンジ。

今度は一回で掴めた。

そして、ゆっくり糸を引っ張った。

頑張れ頑張れ。


ゆっくり糸を切っていく。

痛い。

でも、我慢。

先生が頑張っているのだから、これくらい平気。


無事に終わった。

先生達が笑顔になって、ようやく雰囲気が和らいだ。

山中先生は顔が赤くなって、たくさん汗をかいていた。


田部先生『痛かったですね。

ごめんなさい』

私『大丈夫でしたよ。

ありがとうございました』

山中先生『こちらこそ、ありがとうございました』


研修医の初めての抜糸が私なんて、もう二度とこんな状況に立ち会えないだろう。

なんだか良い経験をした気がする。