夕方になり、主治医の田部先生が来た。


聞きたいことをノートにまとめておいたので、一緒に確認してもらった。


私『他に気を付けておくことはありますか?』

先生『救急搬送かな。

緊急手術をされちゃうと、使えないお薬があるからね。

でもうちに運ばれて来れば大丈夫ですよ』

私『そうですね。

ここに運んでもらいます』

しばらく談笑した。


先生『調子悪かったら、いつでも電話してくださいね。

外来を早めても良いので』

私『先生、命を救ってくださって、本当にありがとうございました。

家族もとても感謝しています』

先生『いえいえ、藤井さん、よく頑張りましたね』


お礼を言うと、いつも照れ臭そうに去っていく。


夕食と、看護師のルーティーンワークも終わり、外は暗くなってきた。

シャワーを浴びて、荷造りをしようと思ったが、なんとなくもう少し待っていようと思った。


しばらく入院生活の出来事を思い出しながら、ぼんやりとしていた。


『こんばんは。

遅くにすみません』

消えてなくなりそうな声。


婦人科の木田先生。

見るからに疲れていた。


先生『最近、すごく仕事が溜まってて。

僕、患者さんとたくさん話をしちゃうから、外来も時間がかかってしまって。

藤井さんのことも、いつも待たせちゃってるので、ご存知だと思いますが。

他の先生みたいに、仕事が捌けないんです。

医局に戻っても、机の上がすごいことになっています』

私『私は、ドライな先生より、木田先生みたいに、ちゃんと向き合ってくださる方がありがたいですよ。

そう思われている患者さん、たくさんいらっしゃると思いますよ』


しばらく先生の愚痴を聞いた。 

そしていつも通り、励ます。

先生『僕、ダメなんですよね』

私『そんなことないですよ。

先生なら大丈夫』

いつの日からか、これがいつものやりとりになっていた。


私『色々と迷惑かけちゃって、すみませんでした』

先生『患者さんと医者は、相性が合う合わないがあらと思うんですよね。

藤井さんはすごく良い患者さんですよ。

迷惑だとか、誰も思わないです』


私『色んなことが起きましたが、全て良い経験だったと思っています。

ありがとうございました』

先生『いやいや、経験しなくて良いこともありますよ。

心が追いつかないことばかりで、こちらの方こそ、すみませんでした。

退院後は本当に無理されないでくださいね』


相変わらずネガティブ、だけどすごく心優しい先生。

私に起きたこと、先生はとても責任を感じている。

それがわかる。


先生『ではまた、外来で』

私『私は大丈夫ですよ。

では、また』

笑顔で見送った。


最後にゆっくり話せてよかった。


さて、そろそろシャワーを浴びて、荷造りでもしよう。