前日から持ち物、着替え、靴を準備した。
余裕を持って早めに支度を始めた。
バッグの中身を再確認。
スマホ、鍵、お薬手帳
財布の中のお金、マイナンバーカード
安定剤を飲んで出発した。
病院に着いて、すぐに呼ばれた。
先生『無事に来られてよかった』
仕事を辞めて、最近は少し穏やかに過ごすことができている。
しかし、予期せぬ出来事が起きると体調が悪くなってしまう。
病院に到着するまで、先生に話すかどうか迷っていたことがある。
フラッシュバックのこと。
嫌な記憶。
辛い記憶。
今更、人に話すことではないかもしれない。
でも、聞いてほしいと思った。
私『ストーマになって初めて病室を出る日でした。
まだストーマのことを受け止められていないのに、尿や便、オムツが丸見えの状態で部屋の外に出るのが嫌でした。
でも、何も言えませんでした。
バッグの中身を出してほしいと言えなかったんです。
すごく後悔して自分を責めました。
数日前、この時のことを思い出して、頭の中で何度も繰り返しています』
話しながら涙が止まらなくなった。
先生『苦情を言うべきことよ。
毎日、朝から尿や便を計量していたのなら、同じ時間にやるべき業務をやっていなかったということ。
それはミス。
病院側は慣れすぎてしまって、患者さんにとって辛いということを時々忘れてしまう。
ストーマを受け入れられていない状態だったんだし、配慮が必要だったと思う』
私『言ってよかったんですね』
先生『言った方がよかったと思う。
指摘されて、病院が気が付いて、改善すべきだった』
私『そうですね。
バッグが車椅子から落ちるかもしれないと、行く前から想像できていたのに。
言えていたら、嫌な思いをしなかったかもしれない。
スタッフにも迷惑をかけなかったと思う。
すごく後悔しました』
先生『手術や病気をして、今までの過程で、藤井さんが悪いところはないからね。
反省すべきところは何もないのよ』
え?
時が止まった気がした。
スッと心が軽くなった。
私『辛いことを人に話す勇気がなくて、いつも1人でうじうじ悩んでいます。
だから、聞いてもらえてよかったです』
先生『死を感じるような体験をしてしまうと、日々起きる出来事に対して過敏になってしまう。
音にもね。
時間はかかると思うけど、少しずつね』
言葉に詰まりながらだったが、聞いてほしかったことを話すことができた。
診察時間は1時間弱だった。
次の患者さんに申し訳ないことをしてしまった。
待合室に1人、その方と目が合った。
【お待たせしちゃってごめんなさい】
という気持ちを込めてお辞儀をした。
その方も、お辞儀を返してくれた。
以前診てもらっていた精神科の先生は、初回以外は3〜5分の診察だった。
今の先生はゆっくり話を聞いてくれる。
時間はかかったが、先生に少し心が開けたような気がする。
清々しい気持ちで病院を出た。

