自分の思いを人に話すのが苦手。

どうしてもっとちゃんも話せなかったのか、と後悔することも多い。


病院の診察は、症状や先生への質問をノートに書き、頭の整理をしてから行くようにしている。


この日も、精神科の予約時間までの間に、起きたことを時系列にノートにまとめた。


お局女帝の怖い表情や強い口調、いじめられている山川さんの怯えている映像が頭の中で再生される。


女帝が、退職が決まっていない山川さんの送別会を画策し、周りを巻き込んでいく。


時間、言葉、感じたこと、どんどん書いた。


怖くて反論できなくて、悔しくて、息ができなくなるほど苦しくなったこと。

震えて、涙が止まらなくて、会社を飛び出したこと。


『藤井さん、どうぞ』

ノートを握りしめて診察室に入った。


私『急に診てもらうことになってすみません。

ありがとうございます』


淡々と起きたことを話すつもりだったが、途中で冷静さを失っていた。


女帝の陰湿な言動が頭の中で再生される。


怖い。


山川さんを置いて逃げてしまった。


『藤井さんは何も間違ったことはしていない』


時が止まったように感じた。


間違っていないんだ。

ほっとした。


先生『身の安全を優先した方がいいから、仕事はお休みしましょうね。

会社にはドクターから出社を止められたと言えばいいから』

私『急に休むと迷惑をかけてしまうし、私が行かないと同僚を孤立させてしまうから申し訳ないです』

先生『道徳的な話をしている状況ではないと思う。

藤井さんが背負い込んで、頑張らなくても大丈夫だから』


診察が終わって、体の力が抜けた。

きっと、切羽詰まっていたのだろう。


私だけ逃げるみたいで罪悪感もある。

でも申し訳ない気持ちはあったが、仕事を休めると思うと心が軽くなった。


先生のお墨付きで堂々と休める。

さっきまで号泣していたのに、しばらく女帝に会わないと思うだけでうれしくなった。


ニコニコしながら車に乗り込んできた私を見て、夫はとても不思議そうだった。


明日から何しよう。


なんだか、私って薄情者だな。