夫が出張へ行き、お土産を買ってくれていた。

私の好きなお菓子が売っていて、好きなものなら食べられるかもしれない、と思ったそうだ。


私の分と、看護師へ渡す菓子折りを、着替えと一緒に持ってきてくれた。

面会はできないままなので、病棟の入口で看護師が受け取り、部屋まで運んでくれる。


私『荷物、ありがとう。

上だよ。見える?』

部屋の窓から駐車場へ手を振った。

視力の悪い私でも、車に向かって歩いているのが夫だと認識できた。

手を振り返してくれていた。


看護師への差し入れのルールは病院によって違うと聞いていた。

前回の入院時も、知人に相談してみたが、結局意見がバラバラで、決めることができなかった。


受け取ってもらえなかったら、どうしよう。

迷惑かな。

でも、長い間お世話になっているし、せっかく夫が買ってきてくれたから、渡したい。


迷ったが、渡すことにした。

退院する時より、何でもない日の方が、渡しやすいかもしれないと思った。


夕方、夜勤の看護師がルーティーンワークをしに来た。

前回の入院の時からお世話になっている、顔見知りの看護師。


私『夫の出張のお土産です。

みなさんで食べてください』

看護師『うれしい!

ありがとうございます。

これ好きなんです。

みんな喜びます』


受け取ってもらえて、よかった。

喜んでもらえて、よかった。

心配していたので、ほっとした。


この日も夜は眠れず、部屋の外の足音や機械音を聞きながらぼんやりしていた。

急に思い立って、ノートを小さく切り、折り紙をした。

そろそろ退院のこと、先生に聞いてみようかな、と考えながら黙々と折った。