気管挿管下ではなくなっていたが、ICUで、もう1日過ごすことになった。

夕方には2人患者が増え、3人になった。


尿の管もオムツも外れた。

ICUにはトイレがない。

ベッドの横で簡易トイレを使用するか、離れた別棟のトイレに行くか。

カーテン越しのすぐ横に人が寝ており、簡易トイレは嫌だったので、別棟へ行くことを選択した。

この時の看護師は快諾してくれた。


夕方から夜勤の看護師に交代した。

ICUには、患者3人と看護師2人。

カーテン1枚、嫌でも言動が気になる。


看護師は先輩と後輩ちゃん。

先輩は声だけは聞こえて来るが、自分で動く様子は全くない。

後輩ちゃんが1人で走り回っていた。


私のストーマケアも後輩ちゃんがやってくれた。


隣のベッドのおじいちゃんが、ナースコールを押した。

後輩ちゃんはストーマケア中で、手が離せない。

先輩はあからさまに不機嫌になった。

『もー』と声に出して、溜息をついた。

声を振り絞って、おじいちゃんが苦痛を訴えていた。

『え?何?

仕方ないから、我慢して』

終始、強い口調だった。


深夜0時から朝6時まで、看護師の休憩でワンオペになる。

後輩ちゃんが先に休憩に行くようで、先輩は自分の要求を一方的に後輩ちゃんへ伝えた。

『〇〇さんの摘便、終わらせて行ってね』

『藤井さん、簡易トイレが嫌ならオムツにしてもらって。

トイレに連れて行くとか、無理だから』

『藤井さんの点滴は、休憩前には交換できるように、早めといたから。

次の点滴は〇〇ね。

それなら朝までそのままで大丈夫だから』

カーテン1枚、全部聞こえているが、お構いなし。


点滴投与の速度、順番等、医師からの指示に従うと、先輩の思い通りのオペレーションにならないため、変更したようだ。

時間を逆算して、点滴の速度を上げられていた。

本当に、こんなことして体に影響はないのか。

看護師に殺されてしまうのでないか。

恐怖と怒りで動悸が強くなった。


先輩は、後輩ちゃんが休憩の間に、どうしても働きたくないようで、用意周到だった。


気が付かないと思っているのか。

何も感じないと思っているのか。

患者を舐めている。


『こんばんは』

ストーマ外来でお世話になった草野さんがICUに入って来た。

声でわかった。


『しゅにーん、会いたかったですうー』

先輩の急な猫なで声に驚いた。

さっきまでの低いトーンとは全く別人だった。

しばらくの間、いかに日頃から勉強を頑張っているかという、アピールタイムが続いた。

不快だった。


ようやく先輩から解放された草野さんが、カーテンを開けてベッドの横に来てくれた。

草野さんの顔を見た瞬間、涙が止まらなくなった。

『あー、藤井さん、また泣いてる』

と、笑っていた。

『一昨日も来たけど、眠ってたから、ストーマだけ見させてもらったよ。

大変だったね』

しばらく談笑した。


『パウチ、上手に貼ってくれてるね。

ありがとう』

と、後輩ちゃんにも声をかけて出て行った。


草野さんに会えて、先輩への怒りが少し落ち着いた。


しばらくして、後輩ちゃんが来た。

『私、もうすぐ休憩なので、今のうちにトイレに行きませんか?』

後輩ちゃんに車椅子を押されて、別棟のトイレへ向かった。


『夜中はオムツか簡易トイレでも良いですか?

すみません』

断ると、先輩に怒られてしまうだろう。

『簡易トイレで大丈夫ですよ』


ベッドに戻ると、後輩ちゃんが簡易ベッドの準備と、点滴の交換をしてくれた。

『では、休憩に行ってきますね』


消灯され、急に不安になった。

たくさんの機器の灯りで、真っ暗ではなかったが、動悸が強くなった。

ICUの中に、患者3人と働かない看護師1人。

何も起きないとこを祈った。