退院して2週間、外来の日。
朝一で血液検査とレントゲンを済ませて外科病棟へ。
ストーマ外来、外科、婦人科の受診。
初めてのストーマ外来、番号が呼ばれた。
ストーマ専門の看護師による診察。
『ストーマを造った次の日、ICUに様子を見に行ったんだけど、覚えてないよね?』
あははと大きな声で笑う、おおらかそうな人。
随分ベテランの、草野さん。
覚えていなかった。
立ったまま、ベッドにもたれた。
草野さんがストーマケアを始めた。
『パウチ、きれい貼れてるね。
上手よ。
この辺、痛かったでしょ?
でもだいぶ良くなってる』
ストーマのサイズを測り、写真を撮る。
きれいに拭き上げて、パウダーを振っくれた。
久しぶりに、人にパウチ交換してもらっている。
それだけで涙が出そうだった。
人見知りなので、全く話せなかった。
草野さんの話に相槌を打つのが精一杯だった。
でもなんだかホッとした。
『2週間後、外来の予定入れておくから。
来なくても大丈夫だったら、キャンセルしても良いからね』
しばらく待合室で待って、外科の田部先生の順番が来た。
ストーマの確認。
退院後の食事の確認。
体重の減少を心配されたが、つとめて明るく振る舞った。
『藤井さんがニコニコしているから、安心しました。
それでは1ヶ月後』
産婦人科病棟に移動して、しばらく待った。
診察台に上がり、術後の経過を確認した。
木田先生は元気そうだ。
『お待たせしてすみません。
ゆっくり話せるように、順番を最後にしました』
気温が高くてストーマ生活が大変ではないか。
食事は摂れているか。
無理して家事をしていないか。
夫は協力してくれているか。
『我慢しすぎないでくださいね』
と、心配してくれた。
だから、もう仕事復帰していることは、黙っておくことにした。
『大丈夫です。
毎日ゆっくりしています』
しばらくの間、他愛もない話をした。
『1ヶ月後、田部先生の外来の日に、また顔を見せてください。
暑いので、くれぐれも無理されないように。
何かあったら、いつでも病院に電話してください』
もうそんな甘い言葉に騙されない。
電話をしても、看護師が先生に取り次いでくれないこと、言えなかった。
先生の優しい言葉を信じても傷つくだけだ。
『はい。
ありがとうございます。
ではまた』
笑顔で部屋を出た。
誰も助けてなんかくれない。
そう自分に言い聞かせて踏ん張るしかなかった。
右手でストーマを庇い、混み合う電車に乗って帰宅した。