入院生活が3週目に入った頃から、だんだん慌ただしさから解放されていった。


朝の大名行列、来ない。

管が全部外れて、看護師が来る回数も減った。

ルーティーンワークとストーマケアの練習以外は、ナースコールを押さないと来ない。


先生たちは相変わらずだった。

外科の田部先生と研修医の小林先生、毎日2回。

産婦人科の木田先生は、毎日1回。

命の恩人、天使の研修医、伊東先生は研修科を異動したが、時々来てくれる。


家族には心配をかけたくないので、あまり連絡を取らないようにしていた。

弱音を吐きたくなかった。


一番気楽だったのは、掃除のおばちゃんだった。

他愛のない会話。

『ここのフロアはおじさんばっかりよ。

滅多に若い女性はいないから。

大変ね』


ほとんどは、おばちゃんの愚痴だった。

意地悪な看護師のこと。

外科は病室もトイレも汚いから、掃除が大変なこと。

自宅が遠くて、通勤が大変なこと。

新人が真面目に働かないこと。


いつも聞き役だったが、思い悩んでいることを少し忘れることができた。

おばちゃんが疲れていると言う時は

『今日は床掃除しなくて大丈夫ですよ』

と、サボりをすすめると、すごく喜んでくれた。

お礼に、私がいつも飲んでいる、いろはすを差し入れてくれた。


孤独なのかもしれない。

このまま、思い悩み続けても良くないと思い、対策を考えた。


猫を飼うことにした。

スマホの中で。

エサをあげたり、撫でたりして、かわいがった。

ほんの数日間だけだった。

猫を愛でることより、思い悩むことを選択してしまった。